環境破壊と生命の危機


 今ウクライナではロシアの侵攻によって多くの人命が損なわれています。宇宙開発、人工知能、アバター技術など、最先端の技術が続々と開発され、実社会でもそれが現実になろうとしている現在、人間の英知はまた戦争へと進んでいます。

 第1次世界大戦、第2次世界大戦の悲劇をまた繰り返そうとするのでしょうか。文明がいくら進歩したからといって、必ずしも世界が平和になることはないということが、改めて今回のロシアのウクライナ侵攻によって明らかにされました。
 人間の文明の進歩は素晴らしいものがありますが、人間の心の進歩、文化の進歩は遅々として進まないということの現れでしょうか。
 確かに1776年のアメリカ独立戦争で、アメリカの第3代大統領トーマス・ジェファーソンが起草した「自由・平等・博愛」を謳った独立宣言文は、当時の王政政治が多数を占める世界にあって、画期的な文化面での勝利宣言ではなかったかとも思えるものです。

 それから約250年、人間はどれほど進歩したのでしょうか。経済面では自由民主主義の資本主義が勃興する一方、共産主義が勃興してきました。
 しかし共産主義のソ連は崩壊しましたがその思想を色濃く受け継ぐ“プーチン”政権は専制政治に近いものを敷き、共産主義国中国は習近平の下、19~20世紀初頭の帝国主義を彷彿とさせる領土拡張、侵略闘争へと向かう専制政治を敷き、実施しています。

 その間文明は急速に進化し、20世紀のモータリゼーション、テレビ、冷蔵庫、クーラー等、様々な製品が世に出され、世界は物質的な側面では急速な変化を遂げてきました。

 しかし社会文化の面ではその変化は遅く、今の共産主義の専制政治は王政の頃の専制政治と名前こそ違え、その本質は何ら変わるものではなく、世界は昔と同じく、混とんとしています。

 そして私たちの周りでは得体のしれないコロナウイルスの蔓延によって、社会生活は大きく制約を受け、人々の交流は途絶え、経済は停滞し、人々の生活は経済、福祉の両面で不安を増幅させるものになっています。

 話を世界的な側面から、地域的な人々の生活にまで、問題の領域を落とし込めていえば、癌、自殺、アトピー性皮膚炎、花粉症の蔓延等に見られるように、健康の面等、様々な面で今の社会は大きな問題を抱えつつあるように思われます。
 そこで、今日は各地域で問題となりつつある環境問題の一側面をご紹介させていただきたいと思います。


1.日本の問題
 昭和30年代、水俣で奇妙な病気が流行りだしました。猫が突然気が狂ったかのように踊りだすという病気で、当初は住民はそれを笑って見過ごしていましたが、そのうちに住民に異変が生じ、体に突然猛烈な痛みが生じ、体が変形しはじめました。
 それが今でいう「水俣病」です。
 明治後期に操業を始めた窒素(株)は、1930年から]チッソの水俣工場が触媒として使用した無機水銀の副産物であるメチル水銀を含んだ廃液を海に無処理でたれ流したため、水俣病を引き起こしました。

図1 日本水俣病
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 それは住民に大変な苦痛を強いるものでした。

 イタイイタイ病は、富山県の神通川流域で起きた日本の四大公害病の一つですが、患者が「イタイ、イタイ」と泣き叫ぶことから「イタイ、イタイ」病と名づけられました。
 この病気は、神岡鉱山(岐阜県飛騨市)から排出されたカドミウムが神通川の水や流域を汚染し、この河川水や汚染された農地で実った米などを食することを通じて体内に入ることで引き起こされました。
 こうした環境汚染を通じて日本は、環境を保全するために全力を傾注することになります。

図2 日本の公害
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2.中国の問題
 それでは、中国では如何でしょうか。
 環境問題は日本では一応解決の方向で動いていますが、中国では現在の問題として、大きな社会問題化しています。
 中国でも「イタイイタイ病」は発生し、ガンが異常に発生する「ガン村」が存在しています。
 こうした健康障害の発生は、環境破壊の現実をみれば一目瞭然と言えるでしょう。
 その一端を見てみましょう。

図3 中国の環境破壊
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 写真の撮影は何時なのかははっきりしませんが、現代中国の実態です。スモッグで覆われた都市、廃棄物で汚染された水を飲む少年、色のついた得体の知れない川、廃棄物で覆われた川、こうした実態は中国全土でどれくらいの地域を覆っているかを見てみましょう。
 中国米どころの南部地域は、ほぼ全域といっていいほどの地域が重金属で汚染されている実態が見てとれます。

 皆さんは、土壌汚染はなかなか元通りにならないということをご存じだと思います。そうです、土壌汚染が改善するには、地道な努力を何年も重ねることによってはじめて改善されます。中国の環境汚染は、その規模、領域からみて、その改善には今後、気の遠くなるほどの努力と時間が必要なことが推察されます。

 しかしそれは待ったなしです。その環境汚染の結果をみましょう。
 重金属汚染、奇形動物、またその他多くの障害事例があります。

 日本が経験した事実を、あの広い中国大陸で今まさに実現中なのです。これは本当に本腰を入れて解決に向けて取り組まないことには、解決はほど遠いことでしょう。

図4 中国の重金属汚染地域
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図5 中国の奇形動物
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 また、化学物質が生命に影響を及ぼすことを全世界に知らしめた事件に、1955年11月から1975年4月30日まで続いたベトナム戦争で使われた”枯葉剤”によって、「ベトちゃん・ドクちゃん」という下半身がつながった結合双生児が生まれて話題になったことがありました。

図6 べとチャン、どくチャン
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 いずれにしても、化学物質、重金属などが体内にはいることの危険は、こうした実態を見ることにより、類推できます。
 そして、体内に入る化学物質、重金属などの多くは「口」を通して入るのがお分かりかと思います。また、大気汚染は、鼻、口を通して呼吸器を介して体内に入ります。
 これによって、私たちの体は疎外されます。

3.現在の食の問題
 皆さんは、ポストハーベストという言葉をお聞きになったことはありますか。
 ポストハーベストとは、収穫後に防虫、殺虫のために、穀物(食料)の中に農薬を散布することを言います。
 日本は食料の大輸入国ですから、このポストハーベストの恩恵を多大に受けています。
 逆に言えば、私たちは、多くの農薬を体に取り込んでいるということになります。

 その実態を見てみましょう。

図7 ポストハーベストの事例
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 写真にみるように、穀物の中に直接農薬を散布しています。これはアメリカから日本に輸送する場合、約2か月の日にちを要することから、殺虫、防疫のために農薬散布することになります。

 様々な農薬が使われていることが分かります。そしてその農薬には、奇形性のもの、発がん性のものまであります。

図8 ポストハーベスト農薬検出率
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図9 ポストハーベスト農薬の食品添加物化
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4.環境破壊の行きつくところ
 環境破壊は、最後には私たちの生命破壊に行きつくものと思われます。私たちはロシア、ウクライナ紛争のように派手な殺し合い以外に、環境破壊などを通じて命の危険が身近に迫っていることに、一人一人が警鐘を発する必要があると思われます。

 ロシア、ウクライナ紛争を「ホットな戦争」という言い方をすれば、環境破壊による生命の危機を「クールな戦争」と置き換えることができるかもしれません。

 私たちは「ホットな戦争」には直接立ち向かえることはできないかもしれませんが、「クールな戦争」には、立ち向かうことができるかもしれません。

 地球環境をまもり、地球の命を守って行きたいものです。

なお、写真出典はフリー写真素材集を引用させていただきました。



 



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