国防よりも経済優先の結果は


 戦後日本はGHQ制定の俗に言われる“平和憲法”に守られて、軍隊は他国を侵略するから国内には無くて良い、持たなくて良いとする国の意思から、国は経済に特化する国策、国づくりに励んできました。

 国を守る軍隊は日米安保条約によって米国が守ってくれるから、日本は軍隊を持たず、代わりに経済活動に専念し、経済成長を目指すとした意思で政府は日本を運営することになります。

 日本の経済成長は大きく、戦後1995年頃まで為替の円高に反比例する形で、ほぼ直線的にGDPは拡大してきました(図1)。しかし、その後GDPの伸びは停滞し、現在に至っています。2022年4月28日現在で為替は円安の方向に動きつつあり、1ドル130.33円になりました。

 確かに、日本の経済は政府の思惑通り、急速な成長を遂げてきました。しかしその一方で急激な円高が進行し、日本の製造業は大挙して海外へと歩を進め、国内の製造業は衰退の道を歩み始めます。

 その代わりに多額の海外企業の投資を受け入れた中国が管理為替制度の下、日本に入れ替わる形で台頭し、急激な経済成長を遂げることになります。

 確かに軍隊を持たず、国を守るための自衛隊すら戦争を引き起こす侵略組織として否定し、ひたすら経済成長を求めて政府は経済運営をし、目的は達成しました。1979年にエズラ・ボーゲル博士が唱えた“Japan as No1”は、日本人に大きな自信と誇りを与えたのも事実です。

 しかし、自由民主主義陣営でアメリカに軍事、経済を負っている日本は為替条項でアメリカの意向に配慮した結果、急激な円高で日本の最大の強みの製造業は輝きを失い、その光は韓国と中国に移ることになりました。

 韓国と中国は徹底的に日本の技術移転を図ります。鄧小平は当時日本の家電の雄であった松下電器産業(現パナソニック)に、松下電器産業の家電技術を中国に教えて欲しいと懇願し、松下幸之助は快諾します。

 こうして、家電技術は中国に流れ、圧倒的に低コストでの生産に日本の家電産業は押され、衰退の道を歩むことになります。

 太陽光パネルは日本が注力し、技術開発も最先端を行っていました。しかしその技術も中国に流れてしまい、技術レベルが同等になれば後はコストだけの勝負になり、圧倒的なコストパフォーマンスを誇る中国が太陽光パネル市場を席巻し、今では日本のパネルの多くは中国企業が担っています。

 

 韓国の大手造船会社は過日、「うちの会社は日本の造船会社の設計図、極秘資料をトラック一杯分コピーした」と豪語し、その咎めはありませんでした。

 経済成長のみに照準を合わせて進めてきた政府の経済運営は、虎視眈々と日本を狙う隣国の前に、挫折を迎えることになります。それが20年、30年にも及ぶデフレ経済であり、この間GDPの伸びはほとんどなく、中国が日本にとって代わり世界第2位の経済大国になり、中国は同時に軍事強国の道を歩み、その軍事力はアメリカに次ぐものになるとともに、いつかアメリカを凌駕するかもしれないとささやかれています。

 問題は、日本には日本が軽視してきた軍備がないことが中国を前に、いかに危険なものであることかが分かったことにあります。

 中国の南沙諸島の併合、新疆ウイグル地区・モンゴル地区への漢人進出・香港併合、そして台湾、東シナ海の尖閣諸島の核心的利益発言と、軍事力をバックにした脅かしは留まることを知らず、日本の国を守ることを半ば放棄してきた日本に衝撃を与えるものでした。

 それでも日本の多くの人、また憲法、憲法と宣う学者たちは軍隊を持つことには反対、日米安保条約があるから、日本は大丈夫と、まるで他人事のような発言をしています。

 果たして憲法書籍が日本を守ってくれるのでしょうか。守るのは“人”ではありませんか。憲法、憲法と言って、憲法という条文が日本を守りますか。ミサイルが飛んできたとき、憲法という条文がミサイルを叩き落してくれますか。

 過日、アフガニスタンからアメリカが撤退したとき、バイデン大統領はこう言いました。「自分の国を自分で守るつもりのない国に用はない。」

 日本の甘えた構造は、世界から見て異様に見えるものです。

 2年後の大統領選で共和党が勝ち、トランプ前大統領が当選した暁には、現在の日本を覆うアメリカ任せのこの状態を片務的だとして、在日米軍の一部撤退ということがあるかもしれません。

  戦後日本は国防をアメリカに任せ、経済で強くなればよいという思想の下に、国策がなされてきました。

 その結果、国として、

1.経済成長、経済拡大に失敗しました。そして現在その失敗の継続中です。

2.国を守るための国防をアメリカに任せ、力を入れてきませんでしたが、周辺国の脅威への対応がキンキンに必要になっています。

 以上の国を維持するのに必要な2大要素の国防・経済運営の失敗・無視の結果、国力は衰退し、国防力の無い日本の存立基盤は非常に危ういものになっています。未だに自分たちの国を守る気概のない人達は、日米安保条約によってアメリカが日本を守ってくれると念仏のようにいっています。

 この危うさは何処からくるのでしょうか。

 それは、ロシア・ウクライナ戦争からきました。民主主義のウクライナに強権・覇権国のロシアが突如侵攻し、それまでの社会秩序、常識は覆され、ある国の意思の持ち方一つで、現在の秩序はいつでも破壊されることが分かりました。

 そして、それは過去の話でも、遠い将来の話でもなく、現在の話であり、日本人が戦後思い、理解していた世界が全く違ったものであり、ロシアという大国がウクライナという小国を突如侵攻するという想像すらできなかったことが現実になったことでした。

 日本の周辺には日本に敵対する国が多く、中国、北朝鮮、そして北方領土を考えればロシアも日本の周辺国に入ります。

 経済成長に失敗し、国防を敵視してきた日本は、“裸の王様”宜しく、日本を勇気づけるものを何もかもなくし始めてています。

 では、日本政府の国家としての課題は何処にあったのでしょうか。

 それは、国際環境に対する認識のずれにあるものと思われます。

  • 世界は性善説にたっており、こちらが悪いことをしなければ、相手も悪いことを仕掛けてはこない。日本は今後侵略することはないから、海外からの侵略もない。
  • 軍隊を持つことは侵略をイメージすることになる。相手が攻めてこなければ国防軍も必要無い。
  • 日本の経済的成功は、いつまでも続き、円高圧力の課題に気付かなかった。
  • 世界経済の中で、異なった経済体制の国が国際規約とは逸脱する独自規約を自国に設け、国際取引を攪乱するという知識、認識がなかった。その認識は今でもない。
  • グローバリズムは正しく、生産コストの高い製品は生産拠点を海外に移転し日本に輸入する「開発輸入」が経済合理的。それによる国内の技術革新、製造能力の衰退に気付かなかった。
  • 本来グローバリズムは日本のような先進国に関していえば、技術の海外移転を進める制度であり、日本の活力を弱める働きを持つという認識に乏しい。

こうした政府認識が、日本が軍隊を持つことを拒否し、経済成長のみを求めることになりましたが、円高圧力による、企業の海外移転、それに伴う技術移転などで日本は加工品・工業品を売る国から、生産物を輸入する国へと、その経済構造は大きく変化することになります。

こうして貿易収支の赤字、経常収支の赤字化へと進むことになり、高度経済成長時代とは逆回転の赤字の定着で円安圧力が働くことになり、国民は耐乏生活を我慢する時代へと逆戻りすることになります。

時代はまさにその入り口に差し掛かっており、ここをどうくぐりぬけるか、日本の手腕が図られています。

現在は、この経済・国防をどうするか、議論に上った所としておきたいと思います。

しかしいずれにしても、現在の状況を従来の政府感覚、“平和憲法礼賛者”らのいう戦争放棄という認識では、日本は立ちいかなくなることは明白なので、どのような政府見解、決定がなされるか、よく注意してみなくてはならないと思います。

日本にはもう与えられた時間はないように思われます。多くの方に、政府、国会審議の行方を見守って頂きたいと思います。

真剣でない国会議員の落選を検討しましょう。

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