皆さんのご家庭ではペットを飼っておられる方が多いのではないかと思います。私の家では先日約10~15年近く飼っていた猫が2匹、ほぼ同時に老衰のために死にました。
死んでみると寂しいものです。何も手をかけてやらなかったのですが、布団にくるまって横になっていればどこからともなくやってきて、布団の暖かいところで丸くなっていたものです。
また、躾が悪かったものですから、部屋の中で一度“大小便”をしたことがあります。噴水のような尿を思い切り畳、タンスにまき散らしました。
思い切り、猫を折檻しました。猫としては悪気があってしたわけではないので、迷惑だったことでしょうが、それ以後糞尿排泄の用意した所以外で糞尿をした姿はみなくなりました。勿論屋外では好きなところで排泄をしていましたが。
ところで、皆さんは犬、猫などのペットにどんな食事をさせておられますか。私は犬・猫用の安いジャンクフードを与えていましたが、考えてみればもう少しましな餌をやればよかったと後悔しています。
2007年、米国で、カナダMenu Foods社のペット・フードを摂取した犬と猫少が計16匹死亡し、同社のペット・フードにはネズミ退治用のアミノプテリン成分が含まれ、この成分を含む原料は中国から輸入された小麦タンパク質から検出されたことが明らかされました。
この因果性は、原料である小麦タンパク質は中国から輸入されたものであり、犬・猫の死亡時期がMenu Foods社が原料を中国製小麦タンパク質に変えた時期と同じことから、その因果性を否定できないとの見解がもたれたようです。
こうして、アメリカで中国製製品の輸入禁止が進められましたが、アメリカ食品医薬品局(FDA)が中国製の有毒練り歯磨きに続き、抗菌剤が検出された魚介類の輸入禁止を発表して以来、中国側は「米国製も危ない」として“反旗ののろし”をあげ、対決姿勢を強めたと言います。
こうして、養殖魚介類や練り歯磨きなど有害な中国製品がアメリカで輸入禁止になる中、中国はアメリカ製冷凍肉の輸入禁止を発表し、中国は「他国の製品にも問題がある」と、アメリカ製品の問題を取り上げるとともに、ロビー活動を活発化させ、対決姿勢を強めていきます。
2007年、集団中毒事件のすくなくとも8件は風邪薬服用により生じていると言われています。
調査によると、最新の中毒事件4件の内、3件が中国製のニセ風邪薬が原因であることが判明し、2006年にパナマで起きた中国製風邪薬の服用では、395人の死亡が確認されたと言います。
395人が服用していた薬は、パナマ当局は26万本の風邪シロップを製造・配布したもので、これらの薬に、工業用ジエチレングリコールが添加されている中国製風邪薬が入っていたことが判明しました。
ジエチレン・グリコールが添加された咳止めまたは解熱用の薬を服用した患者は、腎臓衰弱および呼吸困難に陥り、命を失うこともあるといいます。
パナマが輸入した偽グリセリンは、江蘇泰興市グリセリン製造工場の製品を北京からスペイン・バルセロナを経由してパナマへ輸出され、3つの貿易会社を経由していることから、ラベルに貼ってあるメーカー名と代理店名が消され改ざんされたことにより、最終的に出所の判明が分からない状況にあったといいます。
そして、ニューヨーク・タイムズ紙の追跡調査によれば、江蘇泰興市グリセリン製造工場は、医薬品原料の製造許可を持っていないことが判明しました。
この疾病に対する中国側の対応をみてみますと、中国側の言い分として、
パナマで中国製原料のせき止めシロップを服用した市民が多数死亡した件について、北京の貿易会社はパナマでシロップが薬品として使用されることを知らなかったとの調査結果を発表して中国側の関与を否定しました。中国側は「パナマの会社が使用範囲を変えた」と述べ、責任はパナマ側にあるとの見解を示しました。
一方、パナマでせき止めシロップと同じ有毒物質が含まれた中国製練り歯磨きが発見された問題に関しては「毒性の低い物質だ」との分析結果を発表し、大量に摂取しなければ問題はないとの見解を示しました。
以上の2例から、中国の思考、対応姿勢がよく伺われます。最終的に中国は謝罪をするのではなく、問題の所在を相手方に求め、自己責任を回避すると共に、禁輸措置を取られた場合、アメリカのBSE問題のように謙虚に相手の言い分を受け容れるのではなく、対抗措置を取って、有無を言わさず相手を屈服させようとする所に、中国社会の大きな特徴があると言えます。
あの巨大なアメリカが2003年に発生した牛海綿状脳症(BSE)に対して日本の要求を聞こうと努力する姿勢と、今後アメリカと並ぶ世界の超大国として君臨するであろう中国の姿勢に180度の違いがあるのが、中国共産主義社会と民主主義社会の大きな違いの一つであるように思われます。
確かに、ものの需給関係は中国社会でも比較的自由かもしれませんが、思想、政策手段、対応の仕方等を考える場合、すぐに有罪、絞首刑、銃殺を執行する中国社会は一人一人の個人を尊重し、民主主義を標榜する西側社会とは全く違う世界であることを思わせます。
もう少し敷衍したいと思います。今後中国はその戦略、戦術の巧みさからして必ず超大国として世界に君臨します。しかし、そのとき世界は現状を延長して考えれば、圧政と格差社会容認の社会へと進み、世界が中国の思惑通りに動かない場合には恫喝と圧力により、正義、倫理、道徳が通用しない非常に住みにくい世界になる可能性があります。
表1をご覧ください。過日の、日中ネギ・シイタケ・畳表貿易戦争の表です。
1999~2000年にかけて、中国から大量のネギ、シイタケ、畳表が輸入され、国内農業に深刻な打撃を与えました。そこで日本は2001年4月、WTOルールにのっとり、セーフガードを発動しようとしたところ、中国が猛反発して自動車等3品目に係る特別関税措置を設けると言ってきました。
表を見てお分かりのように、急激な輸入は生産者価格を暴落させ、経営が維持できなくなります。そのために、WTOでは、セーフガードは認められているのですが、中国はこの認められたことに対して報復関税をちらつかせ(これは認められていません)、中国の一方的要望を押し付けてきました。
日本が当時セーフガードをすれば約60億円程度が守られると言われていましたが、自動車等3品目の輸入規制による損害は約90億円と言われ、結局セーフガードの発動は見送られました。
確かにアメリカには多くの点で問題がありますが、しかし少なくとも正義にもとるような理不尽な圧力、圧政を強いることは基本的にありません。
第二次世界大戦で中国に多くの損失を与えた日本は、中国が超大国になった場合、最も信頼のおけない国として多くの損失を逆に被る国になるような可能性があります。
もう一点、お伝え致します。
1995年、ヤオハンの和田一夫は上海浦東新区に当時としては中国一の百貨店「Next age Shanghai 新世紀商場(新世紀商厦)」を開店し、初日には107万人が来店したといいます。
しかし、来店客は値段が高いので品物を見るだけで終わり、収益には結びつかなかったと言います。
和田は上海に来るまで順調に業績を伸ばし、東南アジア、香港などへ出店しており、1990年、家族とともに香港へ移住し、1996年、総本部の上海移転とともに上海に移住します。しかし、1997年、上海市栄誉市民賞を受賞するも経営危機に伴い日本に帰国することになります。
和田が上海で営業を始めるために上海出店を決め、上海への移住を決断し、実行に移します。
迎える中國資本は和田のこの決断と実行に対して、どのような考えをもっていたかと言いますと、
『日本から首に札束をぶら下げた“鴨”が来る。さあ、どう料理しようか』と言い合っていたそうです。
和田が上海で会う取り巻きは“イエスマン”ばかりで、和田のご機嫌取りで、和田にお金を出させることに腐心していたそうです。そうした中国人の取り巻きに囲まれた和田はとうとう1997年9月にヤオハン・ジャパン(旧ヤオハンデパート)を経営破綻させ、和田はヤオハン関連の全ての役職から辞任し、ヤオハン・グループは崩壊することになりました。
ヤオハン・グループが崩壊したとき、それまで懇意にしていた中国人は蜘蛛の子を散らすように一斉に和田から離れ、誰一人として和田を助ける中国人は現れなかったと言います。
このことが、『日本から首に札束をぶら下げた“鴨”が来る。さあ、どう料理しようか』ということの結末です。
結局和田は一度日本を捨てて中国に渡りましたが、日本に帰ることになり、最後の面倒は「捨てた日本に見てもらう」ことになりました。
後日、私は上海の「Next age Shanghai 新世紀商場(新世紀商厦)」に行ってみました。するとデパートの上に「八佰半」の看板が掲げられていました。
私は中国人に尋ねました。
“屋上に「八佰半」の看板がかかっているけど、このデパートは今でも日本人が経営しているのですか”
“いや、いや、経営は中国人ですよ。”
“あれ、でも看板は「八佰半」と、日本式になっていますよ”
“ああ、そのことですね。中国人は日本語が書いてあると安心するんです。だから、ロゴも標語も、できるだけ日本語表記にしています。経営は完全に中国人ですよ。”
和田は中国に進出して、全てを失いました。それまでの輝かしい経歴も何もかも、「八佰半」というブランド名まで中国資本に乗っ取られました。
和田は一文無しで日本に帰ることになります。
『日本から首に札束をぶら下げた“鴨”が来る。さあ、どう料理しようか』
中國の奥義は深いと言えます。
以上、食品・食料への中国の対応を見るとき、その基本はどんなに自分に非があろうとも、絶対に認めないどころか、逆に相手の非にしてしまう狡猾さ、圧力・脅しが中国の基本的思想、行動だということを認識しておく必要がありそうです。また、ヤオハンの事例からも分かるように、私たち日本人には想像もできないようなしたたかさが中国人にはあるものと言えます。
中国人の両親が、子供が就職で世間に飛び立っていくときに送るはなむけの言葉は「騙されないように気をつけなさい。」であり、「しっかり頑張りなさい」ではありません。
今後コロナ収束後再び中国に商売に行く人がいると思いますが、中国の本質を知ったうえで経済活動をする必要があると思います。
中国では、「騙す方が正しくて、騙される方が悪い」という“性悪説”が基本であり、日本や欧米のように「騙す方が悪く、騙される方が正しい」という“性善説”は通用しないことを念頭に、中国での経済活動をされますことを祈念しています。