財政・金融改革と日本の将来


 現在、日本経済はデフレ不況の真っただ中にあると言っても過言ではありません。その原因は、日本経済の需要不足によって“もの”の供給サイドの生産が上がらず、企業の設備投資意欲も停滞したままで、賃金水準の低下、雇用環境の悪化・停滞が続き、経済活力が落ちていることにあると思われます。

 こうした状況下にあって、景気回復のためには積極財政措置が採られる必要があるのですが、政府は財政健全化を謳い、消費増税を基本とした緊縮財政を取り続けています。

 そのために教育・研究開発費の削減、公共事業など設備投資の削減などが続き、日本経済の活力は失われつつあります。

 

 こうした緊縮財政措置を取る理由は、政府債務(ほとんどが公債発行による)が約1000兆円という大きなものになっているため、その債務返済に多額の資金を要するということで、公債発行をできるだけ控え、税収増を図って歳入を賄おうとしているところにあります。

 そのために、2000年代になってから3回の消費増税が行われ、その都度経済成長は大きく損なわれ、デフレ経済からの回復は遅れることになりました。

 ところで、日本の財務内容を改善する方策は無いのでしょうか。現在の経済・財政運営をしている限り、日本経済が浮揚する見込みはありません。

 

 多くの識者は経済不況、デフレ問題について、問題点の指摘はするのですがその解決方法は示さず、現状の政府の仕方を追認する形で、その中で改善を模索しています。

 しかし、現状の経済・財政政策で20~30年、失敗し続けていることから考えて、従来の枠組みの中では解決不可能ということは、明らかになっています。

 こうした中で、既存の制度、枠組みを見直し、現在の苦境を打破できる制度を提案し、実施に移すことが大切に思われます。

 例えば、財政ファイナンスは、財政規律の喪失を意味するから実施には反対、また国と日銀は別会社だから連結決算はできないとうとう、こうした枠にはまった中で、経済・財政政策をするから解決方法が出ないのであって、こうした枠を取り払えば、“日本再生”の道が見えてくるのではないでしょうか。

 財政ファイナンスの危険性は「財政規律の喪失を招く」「中央銀行による通貨の増発に歯止めが掛らなくなって、悪性のインフレ(ハイパーインフレ等)を引き起こす恐れがある」「その国の通貨や経済運営に対する国内外からの信頼が損なわれる」ということですが、財政ファイナンスをして企業が困るとか、政府債務が増加するなどと言った問題、法的問題は一切発生しません。

 日銀は日本銀行法第八条で、資本金が1億円とされ、そのうち政府からの出資の額は5500万円を下回ってはならない、と規定されています。

 現在日銀は「日本政府」が出資金(株式)の55%以上を保有する、政府の「連結子会社」(出資比率50%超)に該当します。したがって日銀は、日本政府グループの「連結決算」の連結対象になることになります。

 政府・日銀の連結性、財政ファイナンスは、基本的に日本政府に問題となるものではなく、その利用方法に節度が必要ということのみで、その他になんら問題となるものはありません。

 今日本が浮沈の瀬戸際に立っている状況の中で、自らの手足を縛って何もできないと泣き言をいうよりも、「政府・日銀連結決算無し」「財政ファイナンス禁止」と言った足かせを取り払い、全ての解決方法の中から最適な解を求める必要があると思われます。

図1 資金循環

図1を説明しておきたいと思います。Aで国債を発行した政府は民間(ここでは銀行)に売り、民間から資金を得て、それを企業に投資し、企業は設備、資材などを購入して、生産活動に入ります。

 一方日銀は銀行から国債を購入し、銀行は売渡代金を日銀の当座預金口座に預け入れ、日銀は国債と日銀当座預金という資産と負債を得ることになります。

 こうして日銀の資産は膨張することになります。

1 連結決算の場合

統合政府:政府と日銀の貸借対照表を連結して、一つの会社の貸借対照表としてみる見方

図2 政府バランスシート
図3 日銀バランスシート

 図2、3を見ると、政府と日銀の連結決算を見ると、2017(平29)は、▲488兆円、2018(平30)は、▲501兆円となり、国の赤字額は2018年488兆円、2019年501兆円となり、政府が発表している約1200兆円の赤字など、とんでもない数字ということが分かります。

2 財政ファイナンスをする場合

 財政ファイナンスは日銀が引き取った国債を日銀がファイナンスすることになりますから、ここでは2017年に財政ファイナンスをすれば448兆円、2018年に財政ファイナンスをすれば470兆円がファイナンスできます。しかし、一度にファイナンスをする必要はありませんから、1年に50兆円程度と決めておけば、1000兆円のファイナンス終了に20年かかる計算になりますから、ハイパーインフレーションになることもありません。

 このファイナンス資金は政府と日銀で内部処理をすることで済みます。そしてファイナンス資金は産業開発や宇宙開発、海洋資源開発、AI・IT・DX、メタバース開発、設備投資などに使い、また消費税などの廃止を実施して需要を喚起することによって、経済活性化、経済先進国になるように使うこともできます。

 以上、現在日本は袋小路に入り、どう経済運営をしてよいか分からない状況にありますが、しかし、既存の常識を打ち破って、新たな発想でこの財務問題を考える場合、日本に新たな展望が開けるかもしれません。

 ただ、こうした新たな発想で誰が政策運営を行うか、です。

  新たな“新人類”の出現を待つしか手はないのでしょうか。

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