財務省、異例の「悪い円安」発言


 財務省が円安進行に懸念を強め、15日、遂に『価格転嫁や賃上げが不十分な状況で進む円安を「悪い円安と言える」』と言い始めました。

 日銀関係者は「為替防衛のために利上げするなら米国並みに上げないと効果はなく、そのペースで日本が利上げしたら財政が破綻し円安が止まらなくなる」と嘆いています。

 利上げをすれば財政破綻、円安を放置すれば資源価格が高騰し、輸入物価の上昇に歯止めをかけられず、インフレで経済に深刻な影響を与えることになります。

 日本はどちらを選択すべきなのでしょうか。どうすれば良いのでしょうか。

 日本経済は長期のデフレ経済に陥っています。それは財務省が長きにわたって取って来たプライマリーバランス(PB)政策のためであり、その間に日本経済は徐々に縮小均衡に陥り、賃上げが難しくなり個人の所得は減少に転じていきました。

 経済の拡大には、市場に流れる“お金”が増えなければなりませんが、日本ではそのお金が停滞して増えないのです。

 図1の主要国のマネタリーベース(日銀が供給する通貨)を見ると、少しデータは古いのですが、日本のマネタリーベースは極端に低く、市中にお金が回っていない状況が見てとれます。

 それに対して経済成長著しい中国のマネタリーベースは急激に伸びており、経済成長にはマネタリーベース拡大が必要なことは一目瞭然です。

図1 主要国のマネタリーベース

 ではこの30年、財務省は何をしてきたのでしょうか。

 してきたのは日本をデフレ経済に追いやり、更に現在でも“信念をもって”日本経済をデフレに追い込む政策を取り続けようとしていることではないでしょうか。

その状況を一番わかりやすくしたのが、2000年代に入ってからの3度の消費増税でした。景気が回復し始めると財務省が消費増税を敢行し、景気を一気に悪化の方向に進めてきました。

財務省が行ってきたこの事実を覆すことはできません。これが財務省の現在の本質であり、この本質は今でも変わっていません。

デフレは経済にどのような影響を与えるか、おさらいをしておきたいと思います。

デフレ経済であれば国内需要は低迷し、企業は国内での設備投資は控え、商機を求めて海外へと出ていくことになります。

さらに円高であれば、海外で生産すれば為替効果で安く輸入できるために、海外生産を加速させます。皆さんは信じられないかもしれませんが、円は戦後間もない頃は1ドル360円でした。それが今では円安とは言え、1ドル120円です。これを円高と言わず、何というのでしょう。

私たちはこの状況に慣れてしまって、少々円安になってもすぐに輸入物価が高くなったことに不安を感じます。

財務省はPB遵守を保ってデフレ政策を推し進めることで輸出産業である国内製造業の縮小、輸入産業である商業の推進を図る一方、円高は永続するとの読みから産業構造を輸入依存型の産業構造に転換させてきました。

企業はこれまでの為替問題から、円高になっても円安になっても利益が出るように構造改革を進めてきました。

こうした中で財務省が数十年に渡って取りつづけて来た“デフレ政策”は、基本的に日本を“輸入国家”へと転換させるもので、この間に製造業のタカタ、エルピーダメモリ等は倒産し、シャープは外国企業に吸収されていきました。日本の体質、国是とは相反する政策が取り続けられてきた結果とも言えます。

資源がない日本が生き残る道は、日本人の才能を売る、つまり日本人の知恵が詰まった“商品”を作り、売ることしかありません。

しかし、財政破綻を恐れる財務省が選んだ道は、結果的には日本人の知恵が詰まった“モノづくり”を進める“製造国家”ではなく、代わりに海外で作られた“安いモノ”を輸入して国内で高く販売する“商業国家”のそれでした。

モノづくりが本来の姿である日本が、消費を中心とする社会に変わることは、人間の一生で例えれば、青年、壮年から老齢した国に移っていくことを意味しているのではないでしょうか。

 そして今、円安が加速しそうなことから、財務省が勧め、選んだ“PB”への道、“日本を商業国家”にする目論見自体が破綻しそうになっています。

以上が現在日本が置かれた状況ですが、この難局を解決する方法はないのでしょうか。

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あります。そのためには、政府、財務省の抜本的な思想改革・改善が必要であると共に、ある思想に凝り固まり、そこから逃れなくなる“呪縛”を乗り越える必要があると思います。

財務省の弊害は、①デフレを進めたこと、②企業の海外進出を進めたこと、③経済を停滞させて所得が目減りするなか、安価な輸入商品を増やしたこと、④その結果、ヘッドハンティングにより、日本の技術が海外に流れたこと、などがあげられますが、これらの弊害に共通することは、経済の停滞が引き金になっていることです。

デフレ下で経済成長を得る方法は、企業の設備投資を喚起させることと、雇用を向上させることが大切になってきます。

そのためには政府の財政政策と金融緩和政策がセットで実施される必要があります。現在は金融緩和政策だけの片肺飛行です。財政に余裕がない場合には、公債発行で資金を集め、それを将来、経済を拡大させる分野、利益をもたらす分野に優先投資し、経済を浮揚させる政策が必要になります。

以上が、経済発展の王道ですが、公債発行がすでに多額になっており公債発行による利払いに不安を抱える場合、日銀による公債引き受け、“財政ファイナンス”を考慮に入れる必要があるかもしれません。財政ファイナンスという言葉の“呪縛”を振り払い、日銀の公債買取を考える必要が出てくるかもしれません。

しかし覚えておかなくてはならないことは、“財政ファイナンス”は外国企業に経済的な損得問題を引き起こす場合があるかもしれませんが、法的には問題を与えることはなく、一方財政ファイナンスは財政節度を失わせ、中央銀行による通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、また悪性のインフレを引き起こす可能性がありその国の通貨の信用が棄損される恐れがあるということのために、“信用問題”としての課題があることが挙げられます。

したがって、“財政ファイナンス”は失敗すれば、信用に傷がつくかもしれませんが、逆に成功すれば、信用に傷がつくことはありません。一般には失敗の話だけが強調され、“財政ファイナンス”は悪者のように扱われています。

これに付随して、問題は識者の一部は、財政ファイナンスという言葉の“呪縛”にかかり、鼻から“財政ファイナンス”は悪者、拒否に動くことです。

この桎梏が日本の財政政策を難しくしているのですが、この桎梏を取り払い、財政ファイナンスを、例えば990兆円の公債残高がある中で、この年は“30兆円”、次の年は“25兆”と、財政ファイナンスを小出しにするなら、決してハイパーインフレーションに陥ることはありません。

また“財政ファイナンス”を利用することによって消費税の徴収も必要無くなり、消費需要が拡大することによって設備投資意欲が喚起され、景気が回復することにもつながります。

また、円安が進む中、“財政ファイナンス”による資金供給の拡大を、外国に進出した企業の日本回帰を促す資金として活用すれば、日本の経済構造は“日本本来の姿”に戻るものと思われます。

今のデフレ基調の日本にとって、“財政ファイナンス”は財政政策、金融政策を本来の姿に戻す有力な手段になる力を秘めているものと思われます。

いずれにしても、現在の金融、財政問題を解決しようとする場合、日銀の有する「銀行券発券権限」を最大限有効利用し、禁じ手と言われる“財政ファイナンス”を上手く利用し、金融・財政を健全な姿に戻すことで、少々時間がかかるかもしれませんが、現在の「円安、PBデフレ問題」を解決できるのではないかと思われます。

短期的、即効的な解を求めることは難しいのですが、ステップを踏んだ解決を目指すなら、決して解決ができないというものでもないと思われます。


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