中国の躍進と新時代


中国の歴史は長く、過去数千年に渡って支配体制は変わってきました。そして、1644年から1912年に中国に君臨してきた清が滅びた後、幾多の変遷を経て、1949年10月、共産国である中華人民共和国(中国)が誕生しました。

初期に中国を率いたのは毛沢東であり、マルクス・レーニン主義を基本原理としながら、清の末期、から続く半植民地に終止符をうち、列強が中国に押し付けた不平等条約と帝国主義国すべての特権を撤廃することに成功します。1949年10月に中華人民共和国建国宣言をしてから1976年9月までのこの時代は中国では「毛時代」と言われます。

毛沢東の死後、1978年12月~1989年11月、中国を指導したのは鄧小平であり、鄧小平が現代中華人民共和国の基本路線を築いたと言われています。

鄧小平時代に「社会主義市場経済」が打ち出され、改革開放路線を進むことになります。

社会主義市場経済体制の改革目標と基本的枠組みとして、社会主義の初期段階として彼は公有制度を主体にして、様々な所有制経済が共に発展する基本経済制度、そして労働に応じた分配を主体にして、様々な分配方式が併存する分配制度を確立しました。鄧小平の「白猫でも黒猫でもねずみを捕る猫がよい猫だ」という「白猫黒猫論」は当時日本のマスコミに盛んに取り上げられ、有名になりました。

この鄧小平の時代を中国では「特色ある社会主義建設時代」としています。

その後、江沢民(1989年11月~ 2002年11月)、胡錦濤(2002年11月~ 2012年11月)、習近平(2012年11月~ 現在)が政権を引き継ぐことになりますが、習近平の時代に中国は大きく飛躍することになります。

中国が抱える課題に、①新時代に於いてどのような中国の特色ある社会主義を堅持して発展させるのか、②いかにして中国の特色ある社会主義を堅持して発展させるのか、③どのような近代的社会主義強国を建設するのか、④いかにして近代的社会主義強国を建設するのか、⑤どのような長期的政権を担うマルクス主義政党を建設するのか、⑥いかにして長期的政権を担うマルクス主義政党を建設するのか、という時代的要求に対して、習近平は独創的な国政運営の新理念、親思想、新戦略を打ち出したとされています。

その結果、習近平は、新時代の中国の特色ある社会主義思想の創始者であると結論付けられています。

習近平時代に達成されたことを挙げれば、

  • 党の全面的指導において、党中央の権威と集中的・統一的な指導力が保証され、党の指導制度は絶えず改善され、党の指導方式がより科学的になり、全党が思想面で一層統一され、政治面での団結、行動面での一致、党の政治的指導力、大衆に対する組織力、社会への影響力が高まった。
  • 経済建設では、経済発展の均衡性・協調性・持続可能性が向上し、国の経済力、科学技術力、総合国力が新たな段階へと進み、より質の高い、より効率的で、より公平で、より持続可能な、より安全な発展の道を歩みだした。
  • 国防・軍隊建設では、人民の軍隊を全体的・革命的に再構築し、体制を立て直して再出発し、国防力と経済力が同時に向上し、人民の軍隊が新時代の使命・任務を断固として遂行し、粘り強く闘う精神と実際の行動で国家の主権・安全・発展の利益を堅持している。
  • 国家の安全保障において、「一国二制度」の堅持と祖国統一の推進においては、党中央は「愛国者による香港統治」と「愛国者によるマカオの統治」を断固実行し、香港地区の情勢では混乱から安泰への大きな転換を推し進めた。
  • 外交では、世界が混乱した局面で、ピンチをチャンスに変え、中国の国際的影響力・感化力・形成力は顕著に高まり、中華民族は「立ち上がることから豊かになる」の状態から、次のステップ「「強くなる」ことへの偉大な飛躍を成し遂げた」と世界に宣言できた。
  • その他

 習近平がこの10年間に成し遂げたことは、中国の歴史の中でも稀有なことと言えるかもしれません。この10年の経済成長、国力の増強には、目を見張るものがあり、もしも私が中国人で圧力を受けない側だった場合、手をたたいて喜ぶかもしれません。

 1921年7月、上海で中国共産党が結成されて以来、2022年の現在、100年の歴史が党にはあります。

党結成の初期、人民は徹底的に虐げられ、抑圧され、奴隷のように酷使された運命から抜け出して、現在では人々の憧れであった「良い生活」が現実のものとなっています。

鄧小平以降、中国は先進国が数百年かけて歩んだ工業化のプロセスをわずか数十年で歩み終え、経済の急速な発展と社会の安定という近代中国においては不可能と思われていた“奇跡”が成し遂げられました。

中国は、次の100年を見越して、第2の100年の奮闘目標を実現する新たな道に踏み出したと言い、中国共産党が何であるか、何をすべきかという根本的な問題を記憶し、常に謙虚で奢らず、刻苦奮闘し、いかなるリスクも恐れず、いかなる妨害にも惑わされず、決して根本的な問題で致命的な誤りを犯してはならず、執念で決めた目標を実現し、百里の道を行く者は九十里を道半ばである覚悟して復興を推進していくとしています。

中国は習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想を全面的に貫徹し、マルクス主義の立場、観点、方法で時代を観察し、時代をつかんでリードし、共産党の執政の法則、社会主義建設の法則、人類社会の発展の法則に対する認識を絶えず深めなくてはならないとし、新たな発展段階に立脚した新たな発展理念を貫徹して新たな発展の枠組みを作らなければならないとしています。

そして発展と安全を一体化して国防と軍隊の近代化を加速し、バランスをとりながら、人民富裕、国家強盛を実現するとしています。

つまり、日本の明治維新の「富国強兵」の実現を謳っています。その自信のほどが窺えます。

そして“第2の中国100年の奮闘目標の達成”と“中華民族の復興”という夢の実現に奮闘しなければならないとしています。

更なる経済発展、国防と科学技術の発展を画する中国が、世界史の中心になる日が近いのかもしれません。

“中華民族の復興”という中国の野望は、具体的には分かりませんが、今後の中国100年の歴史の中における“富国強兵”は、南沙諸島占有にその解があるのかもしれません。

 私たちは“中国人の価値観”と“日本人の価値観”の違いを、よく認識しておく必要があります。

中国人は基本的に、“性悪説”で動いているように思われますが、それに対して日本人の行動原理は基本的に“性善説”です。

 この価値観の違が何を生み出すかと言えば、「物を取った方が悪いのか、取られた方が悪いのか」といった場合、中国では多くは「取られた方が悪い」となりますが、日本では「取った方が悪い」となります。

 これを例えば尖閣諸島を例にして考えますと、日本人は「尖閣諸島は何も防備をしていないのだから、尖閣諸島に兵器を持って襲ってくるようなことは無いだろう」と考えますが、一方中国人は「尖閣諸島は無防備だから行って占領しよう」となります。

 つまり日本人は、「こちらが何も悪いことをしなければ、相手も何もしない」という発想になりますが、中国人は「相手がなにもしないのなら、行って何かしよう、取ってこよう」となります。

 そして、それらの行動は悪いことではなく、よい行動となります。

 日本の憲法9条の改正も、日本人の性善説で解釈するから、戦争放棄もあり得ますが、性悪説で考えれば、軍隊も何も無いのなら、占領してしまおうと考える国が出てくることに驚いてはいけません。

 いずれにしても、“性悪説”を基本的価値観として持つ中国の、これからの100年は、経済規模が格段に大きくなり、その影響力も格段に大きくなっていることを想定すると、中国の野望は無理をしない限り、ほぼ達成されるのではないかとの思いがします。

 下手をすると、日本はこれからの100年の間に、中国に飲み込まれてしまうのではないでしょうか。

 日本は“赤”の国になる恐れがあります。

 アメリカが支援の手を差し伸べてくれるのを期待するしか、中国の支配から免れる方法はないのでしょうか。

データで読み解く中国の未来 中国脅威論は本当か[本/雑誌] / 川島博之/著

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