皆さん、お元気ですか。皆さんは健康だと思います。日々、何も健康の心配をする必要がなく、無事に過ごされていると思います。ですから、おそらく健康の元となる“生命(いのち)”がどのような繋がりで保たれているかなどはあまり関心がなく、また考えられたことはないのではないかと思います。
私もこれまであまり深く考えたことは無かったのですが、あるときふとしたことから“生命”とはどのように保たれているのだろうかという疑問にとらわれました。
私たちを生かしてくれる“生命”は、様々な繋がりの中で保たれていることと思いますが、その繋がりのバランスが崩れるとき、私たちの健康に異変が起きることが想像されます。
私には持病がありますが、この持病も実は何らかの“生命”のバランスが崩れたことが原因で起こったものではないかという疑問を持っています。
ここで、“生命”の営みを考えますと、“生命”は植物-微生物-動物-微生物-植物-微生物-・・・・・と循環を繰り返し永続しています。この循環を“命の鎖”という表現を用いれば、私たちはこの“命の鎖”で結ばれていることになります。
ここで、もしも私たちが自然界のこの“命の鎖”を阻害して場合、私たちの健康に何か異変が起きるのでしょうか。何故健康が阻害されるのでしょうか。
1 “命の鎖”
最近の研究によれば、アミノ酸などの有機物は植物体内でも作られますが、直接土中から植物に吸収され、代謝経路に組み込まれていくことが分かっています。そして、その効果としては、化成肥料のみの場合に比べて遙かに大きな肥大効果、また穀物などの増収効果が見られると言われています。
土中のアミノ酸は植物や動物の死骸の有機物を土中微生物が分解合成し作られますが、土中微生物が死滅することで植物に吸収されることになります。すなわち植物体によって吸収される土中のアミノ酸は、微生物の発酵、呼吸、光合成などによって得られるエネルギーを基としたアミノ酸合成によって得られ、植物に吸収されます。
植物は、微生物が生成したアミノ酸を吸収するとともに、植物体内でも発酵作用などによって様々なアミノ酸を合成する力を持っており、私たち人間が体内で作ることができないどうしても必要な“必須アミノ酸” イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリンの8種類は、こうした植物から作られたアミノ酸を摂取することで賄われています。これら必須アミノ酸のどれか一つでも欠けると重大な健康障害が起きると言われています。
因みに、タンパク質を構成している単位をアミノ酸といい、タンパク質はアミノ酸がつながってできています(アミノ酸100個以上のものをタンパク質、それ以下のものをポリペプチド、10個以下のものはオリゴペプチドと言われます)。
したがって有機物を分解し、植物に有用な栄養素を供給する微生物の働きは大切であり、また無機質であれば有害な微量要素であっても微生物の力を借りて錯体化、キレート化すれば、無毒化されて植物体に吸収されやすくなるだけでなく、その活力、触媒作用が増すと言われています。
しかし微生物繁殖のためには、微生物が生きていける環境が必要であり、そのためには微生物の食材としての有機物が少なく、農薬が多量に散布され、また化学肥料のみの土壌ではなく、微生物が栄養素として利用できる有機質に富んだ土壌であることが必要とされます。
農薬・化学肥料によって大きくなった野菜と、有機質肥料によって大きくなった野菜の味の違いは、微生物の働きが活発だったか、それとも不活発だったかの違いによるものと言えそうです。
ところで、私たち人間の体にも食物が通る経路には微生物が存在しており、口腔・胃・十二指腸・小腸・大腸と食物が移動する中で、好気性菌、嫌気性菌がそれぞれの場所で活動し、糖化作用の促進、ミネラルのキレート化、錯体化などが行われています。
しかし、外部環境と連続している人間の胃腸には多くの微生物が存在し、それぞれが発酵作用を行っています、防腐剤や食品添加物は腸内に従来から共生的に存在していた有用微生物を死滅させ、また発酵力の低下に力を貸すことになり、逆に防腐剤、添加物に耐性のある悪性微生物が繁殖することによって、体内での通常の食物循環が阻害され、栄養収支に異常を来す状況が生まれることが想定されるようになります。
今一度、“命の鎖”を掲げれば、・・・植物-微生物-動物(体内環境)-微生物-植物-微生物-・・・・・
したがって、微生物、動植物と共生し寄生を通じて生命を維持している人間が、近代農業に基づいて化学肥料、農薬によって微生物を死滅させ、微生物の有用な働きを阻害するような生産技術、パターンを繰り返す場合、有用アミノ酸、錯体化・キレート化された微量栄養素などの不足を来す植物、作物によって人間自身の健康維持も難しくなっていくことも考えられます。
私たちが健康で長生きするためには、“命の鎖”で結ばれた自然界の営みを尊重し、自然界に優しい農業、体に優しく、環境にも優しい食物・食品を摂取する所から始まるのかもしれません。
2.乳児・青少年死亡が意味すること
今、乳幼児から二十歳までの子供たちの死亡原因で多いものが何かご存じですか。
厚生労働省発表の『表1子供たちの死亡原因」』をご覧下さい。これは2021年のデータです。
乳児に特徴的なのは、先天性奇形による死亡が多いことです。これは生殖細胞が何らかの影響で正常に機能しなかった結果の現れです。
なぜ、生殖細胞が正常に機能しなかったのでしょうか。
私たちは既に1960~1970年代のレイチェル・カーソンの「沈黙の春」、有吉佐和子の「複合汚染」、そして1990年代にシーア・コルボーン氏著作の「奪われし未来」で、化学物質や環境ホルモンの危険について教えられています。
『自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。
みんな不思議に思い、不吉な予言におびえた。
裏庭の餌箱は、からっぽだった。
ああ鳥がいた、と思っても、死にかけていた。
ぶるぶるからだをふるわせ、飛ぶこともできなかった。
春がきたが、沈黙の春だった。いつもだったら、コマドリ、ネコマドリ、ハト、カケス、ミソサザイの鳴き声で春の夜は明ける。
そのほかいろんな鳥の鳴き声がひびきわたる。
だが、いまはもの音ひとつしない。野原、森、沼地みな黙りこくっている。』
・・・レイチェル・カーソン「沈黙の春」より
これは多かれ少なかれ、現実のものとなっています。私の田舎では昭和30年代までは蛍が飛び交い、秋には赤とんぼが空を埋め尽くすように飛んでいたそうですが、現在ではほとんど見かけません。田んぼからはタニシやドジョウ、カエルの鳴き声が途絶え、四季の間隔が無くなっています。
人類が自然界に無い物質(農薬、添加物など)を作り、それを体内に取り込むことによって生殖異変が起きることが考えられます。その結果が先天性奇形による死亡の多さではないかとも思われます。
では、青少年における死亡の特徴は何でしょうか。自殺、不慮の事故を除けば、それは「ガン」です。考えてみれば、「ガン」とは昔は老人病ではなかったのではないでしょうか。しかし、今は青少年を蝕む大きな疾病となっています。その原因を考えるとき、食生活の洋風化による過剰タンパク質・脂質の摂取に加えて、近代農業の化学物質多様の農業・食料生産、また特に日本では化学物質混入の輸入農産物とともに、見た目を綺麗にし、腐敗を防ぐ目的で使用する食品添加物、防腐剤等、化学物質等に汚染された食品を通して、国民は化学物質、添加物を極めて多く体内に摂取しており、こうした化学物質、添加物を多用し食する食生活こそが先天性奇形やガンを生み出す原因ではないかとも考えられています。
そして、その影響は母親の胎内にいたときから既に化学物質、添加物などに暴露されており、幼児の体をガンにかかりやすくし、その結果が青少年期に発病という形で出てきているのではないでしょうか。
勿論これは推論です。しかし、食品添加物、防腐剤、農薬などに汚染された食物の過剰摂取が体内の良性微生物環境を阻害し、悪性微生物による健康障害誘発結果によると考えれば、何となくわかります。
体への摂取という観点から考えれば、確かに空気中の様々な有害ガスを肺から吸収する場合もあります。しかし、最も大きな影響を及ぼすものは日々確実に栄養素として摂取する「食物」ではないでしょうか。
私たちの老後の生活を豊かにする条件は「健康であること」ですが、そのためには「良い食物」、「健康に優しい食物」を厳選して摂る必要があることを子供達の死亡は示しているものと思われます。また、私たちの未来を創るためにも、「良い食品」、「良い食物」「健康に優しい食品・食物」を厳選して摂る必要があることが望まれるものと思われます。 命の鎖を考える時、乳児、青少年の死亡要因は、私たちの現代社会の問題をあぶりだしているように思えて仕方ありません。