事故後に出会った私の宝 D9


 事故後退院して事故処理がほぼ終わった頃だったと思うが、私は私の”魂”を揺さぶる名言に遭遇した。それはi-phoneを世に出した”スティーブ・ジョブズ”氏の「最後の言葉」だった。
 確かに、ちまたではそれはフェイク(偽)情報だという噂もある。しかし、たとえそれがフェイク情報だとしても、私は感動した。私は命に係わる大きな事故を起こし、多くの人に迷惑をかけ、多くの人の助けを受ける中で深く考えること、考えざるを得ないことがあった。
 それは、多くの人から受けた”愛と優しさと思いやり”だった。私が事態を理解し、状況を把握した後、言い知れない罪悪感、後悔の念に苛まれていたとき、周囲から与えられる優しさと思いやりは私に大きなぬくもりと元気、希望を与えてくれた。
 貧しい私は毎日アクセクと仕事に出かけ、仕事を人生の第一、いや第一と言わないまでも、家族以上に大切なものとしてこれまで生活してきたような気がする。
 しかし、瀕死の重傷を負ったあと、運よくこの世に戻ることができた。これまで仕事でほかの多くの大切なものを犠牲にしてきたと思うが、そのまま死んでいたら自分の人生とは一体全体なんだったのだろう、私にどんな存在意義があったのだろう、ということが私の脳裏を行き来していた。

 こうした状態で私が悩んでいたとき、ジョブズ氏の金言に出会うことになった。

 ジョブズ氏は言う。
 
 『人生で十分にやっていけるだけの富を稼いだら、富とは関係のないもっと大切な何か他のこと、たとえば、人間関係や、芸術や、または若い頃からの夢などを追い求めるのがよいかもしれない。
 
 私が得た富は、私が死ぬ時には一緒に持っていくことはできない。私が持っていける物は、愛情にあふれた思い出だけだ。この愛情にあふれた思い出こそが本当の豊かさであり、あなたとずっと一緒にいてくれるもの、あなたに力をあたえてくれるもの、あなたの道を照らしてくれるものなのだ。
    
 あなたの家族のために愛情を大切にしてください。あなたのパートーナーのために、あなたの友人のために。そして自分を丁寧に扱ってあげてください。他の人を大切にしてください。』

 この文章に出くわしたとき、私は全身に鳥肌が立ったように感じた。貧しい私は仕事に精を出すのも良いかもしれない。しかし、富、財産は必要以上に必要ない、それは死ぬときにもっていくことはできないのだから。

 それ以上に大切なもの、それは愛情にあふれた思い出作りにあると。
 そしてそのためには家族を愛し、自分を大切にし、有人・知人を大切にすることが必要だと。

 私がこれまで疎かにしてきた事柄こそが大切だとジョブズ氏は言う。そして、今回の自動車事故を通して、私はジョブズ氏の言葉に真実があることを実感している。

 私は天からの声が与えらえたような気がしてならない。

 以下にスティーブ・ジョブズ氏の「最後の言葉」を載せておく。

 出典:①国際文化研究室・編「スティーブ・ジョブズ最後の言葉」2016.3.1、           

スティーブジョブス氏の最後の言葉

 『私は、ビジネスの世界で、成功の頂点に達した。他の人の目には、私の人生は、成功の典型的な縮図に見えるだろう。しかし、仕事をのぞくと、喜びが少ない人生だった。人生の終わりには、富などは私が積み上げてきた人生の単なる事実でしかない。

 病気でベッドに寝ていると、人生が走馬灯のように思い出されてくる。私がずっとプライドを持っていたこと、人の称賛や富は、迫りくる死を目の前にして色あせていき、何も意味をなさなくなっている。神の息吹を感じる。死がだんだんと近づいている。
 今やっと理解したことがある。人生において十分にやっていけるだけの富を積み上げた後は、富とは関係のない他のことを追い求めた方が良い。もっと大切な何か他のこと。それは、人間関係や、芸術や、または若い頃からの夢かもしれない。

終わりを知らない富の追求は、私のように、人を歪ませる。

神は、誰もの心の中に、富みによってもたらされた幻想ではなく、愛を感じさせるための「精神(こころ)」というものを与えてくださった。

私が勝ち得た富は、私が死ぬ時に一緒に持っていくことはできない。私が持っていける物は、愛情にあふれた思い出だけだ。これこそが本当の豊かさであり、あなたとずっと一緒にいてくれるもの、あなたに力をあたえてくれるもの、あなたの道を照らしてくれるものだ。
    
愛とは、何千マイルも旅をする。人生に限界はない。行きたいところに行きなさい。望むところまで登りなさい。全てはあなたの心の中にある、全てはあなたの手の中にあるのだから。

 あなたのために、ドライバーを誰か雇うこともできる。お金を引き出してもらうことも出来る。だけど、あなたの代わりに病気になってくれる人を見つけることは出来ない。   
 物質的な物はなくなっても、また見つけられる。しかし、一つだけ、なくなってしまっては、再度見つけられない物がある。“人生だよ。命だよ。”

あなたの人生がどのようなステージにあったとしても、誰もが、いつか、人生の幕を閉じる日がやってくる。

あなたの家族のために愛情を大切にしてください。あなたのパートーナーのために、あなたの友人のために。そして自分を丁寧に扱ってあげてください。他の人を大切にしてください。』

 注:ジョブズ氏は、ここでは病院で亡くなったように記載されているが、実際には2011年10月5日、膵臓腫瘍の転移による呼吸停止によりパロアルト (カリフォルニア州)の自宅で死去。



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