2022年3月28日の外国為替市場で1ドル125.10銭と、2015年の125.86銭以来の安値をつけ、日銀の為替介入のけん制が行われました。
つい先ごろまで、1ドル105円前後で推移していた円・ドル相場は、急激に円安方向に振れることになりました。
円安のメリット、デメリットとして、
1.メリット
1)輸出を促進できる
2)円建ての輸出が増え、輸出企業の収益が拡大する
3)海外からの配当などが円建てで増加する
2.デメリット
1)原材料高で輸入企業の収益が悪化する
2)ガソリン高などで消費者の購買力が低下する
などが挙げられます。
今回の円安要因として、①米連邦準備委員会(FRB)の米国高インフレ鎮圧のための金融引き締め、②コロナによる供給制約とロシア・ウクライナ紛争による資源高が挙げられます。
②の「コロナによる供給制約とロシア・ウクライナ紛争による資源高」は構造的要因であり、コロナ禍とロシア・ウクライナ紛争が解決しない限り円安を止めることは難しく思われます。
一方①の「米連邦準備委員会(FRB)の米国高インフレ鎮圧のための金融引き締め」要因ですが、これが円安要因になる理由は、日銀(政府)は多額の金利付き公債を抱えており、日本は返還の公債の金利額水準を低く抑えるためにも、日銀金利を低くすることが必要になっています。このスタンスは日銀黒田総裁の発表から今後も逸脱することはありえません。
米国の金融引き締めは、高金利政策であり、日米間の金利差は今後米国のインフレの程度に応じて上下変動することになりますが、当面はインフレ抑制のために、高金利になることが決定づけられています。
したがって、日米間の金利差は拡大し、低金利の日本から高金利の米国に “ドル”の流れが起きることが予想されるために、円安が加速化されることになります。
ところで米国のインフレは何故おきたのでしょうか。景気が良くなり、拡大したから。いや、コロナが蔓延する中で、景気が拡大することはありません。ではなぜインフレが始まったのでしょうか。
そもそも“インフレ”とは“景気拡大”の代名詞のようなものでインフレが起きた場合には、必ず景気が過熱気味であると言われ、逆に”デフレ“とは”不景気“の代名詞のようなもので、デフレが起きた場合には必ず景気が後退気味であるとされてきました。
米国ではコロナ対策として、①雇用の確保(企業・失業対策)、そして②消費者対策として金融緩和措置、巨額の財政支援が行われ、二つの問題の解決に進んでいきました。
バイデン政権は、コロナ禍からの「より良い回復」を達成するために、①約1.9兆ドルの米国救済計画 、②約2兆ドルの米国雇用計画 、③約1.8兆ドルの米国家族計画という経済・財政の三大計画を発表し、その総額は総額約6兆ドルに上ります。
こうして米国の雇用、景気は回復してきましたが、多額の財政支援による“金余り(過剰資金)”が表面化することによって、インフレが発生してきたと考えられます。
インフレを抑制する方法としては、
- 金融引締(金利アップ) :設備投資抑制
- 緊縮財政、税のアップ(主に消費税) :支援金抑制(余剰資金回収)
が挙げられます。
金融引締めは、設備投資意欲を減退させ雇用を悪化させます、雇用が十分に確保されている状況の場合、景気過熱を冷やす意味からも重要です。
一方、緊縮財政は政府支出を減らし、財政政策によるインフラ投資、設備投資の減少、財政支援縮小による消費者の購買力の減少を通じて景気を冷ます方法ですが、最も即効性があるのは“税収”のアップ、特に消費者に直接訴求する“消費税”のアップはインフレ抑制効果が大きいものと推察されます。
今後取られる米国のインフレ対策は“高金利”政策を行う一方、コロナ対策支援をなくすことにあり、この方法によりインフレを抑えるとします。
しかしこの方法では大量に市場に投入された過剰資金は回収されず、インフレの鎮静化には時間を要することが想定されます(これに比べて税収アップ、消費税率アップの場合、過剰資金を直接回収できるために、インフレ抑制には短期的効果を発揮しやすいと思われます)。
いずれにしても、過剰資金は回収されずそのままに、金利政策によって景気過熱を治める選択が取られる場合、高金利政策はインフレ抑制に時間がかかることを想定しておく必要があります。
すなわち、日本の低金利政策はこのまま続き、かつアメリカの高金利政策もこのまま続くことを考えますと、今後は円安が定着する可能性が高いとみることができます。
ここで、次に日本が生き残るためには、どういう経済構造が相応しいのかを考えます。
ほとんどの国は、自国の強い商品力のあるものを売って弱いものを購入することで、国家のバランスを保っています。
日本には外国に売るような天然資源はありません。では何を売るのでしょうか。それには2つの側面から見ることができます。
- 人間の英知を詰めた“商品”、“技術”、“文化”などがあり、ただ単なる天然資源ではなく、その天然資源を加工した商品等を売ることにより外貨を獲得する方法。
- 日本を売る。といっても、国土を売るのではなく、日本の観光費用が安くなるために観光客の誘致を行いやすくなり、多くの観光客にきてもらうことにより、外貨を獲得する方法。
この条件に合う経済構造はどのようなものでしょうか。円高を基礎とする経済構造でしょうか。それとも、円安を基本とする経済構造でしょうか。
そうです。円安を基調とする経済構造です。モノづくりに長けた日本が生活するためには円安基調が合理的で輸出が伸び、外貨を獲得しやすくなります。
円安で輸出が伸び、また日本が相対的に安くなることによって観光客の増加が見込めます。資源の無い“日本”が基本的に取るべき道は円安なのかもしれません。
ここで問題が発生します。
では円安が続いた場合、日本は本当に問題なくやっていけるのだろうか。
これまで、日本は円高の中で経済が30年近くも運営されてきましたから、円安に対応できるか不安に思われる方は多いと思います。
何故円高が発生したのか、円高に耐える経済構造とは何か、円安循環を望まない人々、円安への対応はどうすればよいのか、今日はここまでで、また稿を改めてご報告させていただきたいと思います。