スパイ防止法に反対の理由とは! A7


1941年10月、国際スパイの容疑で尾崎秀実、ドイツ人のリヒャルト・ゾルゲらが検挙され、1944年11月ゾルゲ、尾崎は処刑されました。
たかがスパイくらいで、何故処刑されなければならなかったのでしょうか。

 1939年8月、ドイツのポーランド侵攻を前にして、独ソ不可侵条約が締結されました。しかし欧州大陸を制圧し、ソ連と利害が対立するバルカン半島問題、また東方植民地を求めるヒトラー・ドイツはソ連侵攻を企みます。1941年6月、独ソ不可侵条約を破棄してドイツはソ連侵攻を開始します。
 軍内部で大量粛清を行っていたスターリンソ連は独ソ不可侵条約によりドイツの侵攻への備えが十分ではなく、敗戦が続きます。
 しかし、独ソ戦開始前にすでにドイツのソ連侵攻はソ連にリヒャルト・ゾルゲを通じて連絡されてありました。1941年5月に東京に来京したドイツ陸軍省特使から東京で活動をしていたゾルゲはドイツの独ソ戦開始の方針を知り、6月22日がその日であるとモスクワに連絡しています。
 当時、ソ満国境には日ソが軍隊を派遣しており、ソ連の懸念はドイツの侵攻が予測されたとしても日本が1939年のノモンハン事件の時のように軍を国境に差し向け、対ソ開戦にふみきるかどうかということでした。
 1941年6月に独ソ戦がはじまっており、戦力を満州国境近くにおくことは独ソの西部戦線を不利にするため、日本との戦いは極力避けたいところでした。     1941年4月に日ソ中立条約が結ばれており、ドイツのソ連侵攻は日本のソ連侵攻がないことを見越したうえでの判断と言えます。しかし、いずれにしてもソ連は日本の動向を探る必要がありました。


 支那問題顧問として近衛内閣に深く浸透していた尾崎秀実は1941年8月、日本の軍首脳会議での日本のソ連参戦はない旨をゾルゲに報告し、ゾルゲはこれをモスクワに知らせており、そして、満鉄からの情報で関東軍がソ連侵攻に準備していた兵力を徐々に削減させており、日本のソ連侵攻はないことを確認しています。


 こうしてソ連はソ満国境の兵力を独ソ戦に振り向けることができ、ゾルゲの情報はソ連の独ソ戦勝利に大きく貢献することになりました。
 関東軍の兵力削減は、北南進作戦で北進作戦のソ連への侵攻を止め、南方への兵力を増強させることであり、ソ連の危機は遠のきました。

 そもそもの戦略の決定は、独ソ戦の開始により、“4月締結の日ソ中立条約を破棄してでもソ連と開戦すべし”という当時の第二次近衛内閣の外務大臣だった松岡洋右の北進論と尾崎秀実らが推す南進論派の近衛文麿との意見が合わず、松岡外しのための第二次近衛内閣解散、第三次近衛内閣の誕生により、松岡洋右がいない中で南進論が決定されることになりました。


 ヒトラー・ドイツの支配下のビシー政権の合意により、平和裏に南部仏印へ進駐すると、アメリカはABCD包囲網を築き、日本への石油の全面禁輸に出ることになり、大東亜戦争への道に繋がるものとなりました。

 1941年11月、ソ連スパイのハリー・ホワイトによって起草されたホワイト草案によるハルノートが野村・来栖両大使に渡され日米交渉は決裂し、1941年12月8日、日本軍はアメリカハワイを奇襲します。ここに大東亜戦争が始まりました。

 日本が大東亜戦争を始めたことにより、アメリカは日独伊三国同盟のドイツにも宣戦布告をすることになり、戦局は大きく変わることになります。

そして、1945年5月にドイツが降伏、次いで同年8月に日本が降伏することでアジア・ヨーロッパを巻き込んだ第二次世界大戦は終結しました。

 ソ連のスパイ活動によって第1次世界大戦後の自由民主の強国の一角日本が、同じ自由民主の強国アメリカに敗れ、ソ連は“夷を以て夷を制す”ことで、日本と戦わずして日本を敗戦に追い込むことができました。これはひとえに優れたスパイによるところが大きいものと言えます。


 スパイ活動が一国の命運を握り、一国の命運を左右することが歴史の中に見て取れます。スパイ活動は何も、技術の漏洩、情報活動などだけでなく、大きく国の命運を握る活動に組み込まれていることが分かります。

スパイ防止法に反対するということは、これらの危険を顧みないことを意味し、それは一国の安全、国の将来にとって極めて危険なことを意味します。

スパイ防止法に反対する理由は、スパイを送り込む側に凋落されているか、自国、自国民よりも他国、他国民をより愛するがゆえのことであると思われます。しかし、圧倒的多数の自国、自国民を危険に晒す行動は許されることではありません。
もしも、自国・自国民よりも他国・他国民を愛するならば、移民、他国に帰化申請すればよいことです。多くの善良な国民を巻き添えにする必要はありません。

 こうしてみると、スパイの力はとても大きいものと思われます。・・・たかが“スパイ”、されど“スパイ”!!


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