遺言書と遺産分割協議書 D12


 遺産相続問題が発生したのは、私が手の不自由な父の意思をくみ取って遺言書をタイプし、父の確認をとり実印を押印した遺言書を妹が確定申告書の諸資料の間から見つけ出し、家庭裁判所に持ち込んだことから始まる。
 しばらくは何事もなく日常生活が流れていたため、父の死後の様々な処理を実行していた。こうした中で、ある日突然、遺言書が見つかったので遺産相続の権利がある者全員が家庭裁判所に集まって遺言書の封を切り、相続遺産の確定をしようと言ってきた。

【家庭裁判所】
 家庭裁判所:この遺言書は本当にお父さんが書かれたものですか。遺言書が効力を発揮するのは、本人が自筆で書き、実印が押されていなくてはなりませんよ。
 妹:分りません。
 家庭裁判所:この書類の表書きの筆跡はお父さんのものですか。
 妹:兄の筆跡に似ています。
 家庭裁判所:表紙は誰が書いてもかまいませんが、封書の中身は本人自筆でないと効力はありません。よろしいですね。

 以前から実家に長く住んでいてこの家の相続は自分にあると公言していた妹は、遺言書に家の相続は自分にあると記載してあると勝手に思い込んでいるようで、喜び勇んで開封を待ちかねているようだった。
 
 私は遺言書の内容を知っており、それが妹が望む内容でないことは分かっていた。開封すれば自筆でなくパソコンでタイプした遺言書で自筆でないことから、妹が遺言書の無効を言い立て、家の帰属を蒸し返すことは分かっている。
 家庭裁判所での調停は難しいことが想定される。
 
 相続問題はこじれると収拾がつかなくなる(この解決については後に述べることになる)。
 
 
 遺産相続には遺言書がない場合、「遺産分割協議書」の作成が求められる。

 「遺産分割協議書」とは、遺産相続の権利のある者が集まり、協議した内容に対して全員が実印を押すことで、協議が成立したことになる。
 遺産相続は2親等まであり、もしも被相続人が死ねば、孫まで相続権がある。ただし、この場合は子が死んだ場合で、子の子、すなわち、被相続人の孫に相続権が及ぶことになる。
 そして、相続人が遠方に暮らしている場合、遠方から呼び寄せる必要があり、遺産相続に問題がある場合には「遺産分割協議書」作成は困難を極めることになる。

「遺産分割協議書」は、特に絶対に作らなければならないというものではないが、必要になるところとして、1.法務局(不動産)、2.銀行(預貯金)、3.運輸局(自動車)、4.証券会社(名義変更)、5.税務署(相続税)が挙げられる。
車の名義変更を例に挙げれば、必要なものとして、
1. 戸籍謄本、2.印鑑証明書、3.遺言書または遺産分割協議書、4.車検証、車庫証明
となっており、「遺言書または遺産分割協議書」が必要になる。

 「遺産分割協議書」作成はなかなか困難であるのに対して、遺言書は誰も集まる必要はなく、極めて明快、シンプルな遺産相続方法と言える。
 不動産の相続手続きに期限はなく、必ずしも行う必要はないようである。ただし、相続登記をしないことによる不利益が発生することだけは理解しておく必要がある。

【市町村社会福祉協議会】
  相続問題に対する社会福祉協議会の意見は、遺言書のように初めから結論をはっきりさせるのではなく、集まった相続人が意見を戦わせ、相続人を誰にするか、遺産分割を現金で行うかなど、討議して、全員が納得する形で結論を引き出すことを目指すものだった。

 妹がいう、土地・家屋の相続については、遺産相続人が集まった中で、討議によって決定されるべきものと考えられる。
 もしも公平を期すならば、土地・家屋、田畑、山林原野を現金化して、これを相続順位にしたがって配分する方法が公平かと思われる。
しかし、これは田舎の家を解体することにつながり、先祖の意思に沿うものではない。

 いずれにしても、こうした遺産相続に禍根を残したのは、 正式の「遺言書」が無かったことによる。

 遺言書の効力を始めて知ったが、時すでに遅かった。多くの方にお勧めしたい。後に家族争議の原因にならないように、「遺言書」の作成を!!

相続 2/遺産分割協議書




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