インボイス制度って何?


―財務省栄えて民貧し-

 皆さんはインボイス制度ってご存知ですか。

 そもそも“インボイス”とは売上金額や税額が明記された伝票のことをいい、特に貿易では、輸出業者が発送貨物の品名・数量・価格・代金等の支払い方法,その他売買・船積み・保険に関する事項などを記載して輸入業者に発送する明細書で、貨物通関手続に必要になる輸出送り状のことを言います。

 私は「インボイス制度」って、インボイスの言葉が使われているから、てっきり伝票の何か、貿易関係の明細書くらいのものだろうと思っていました。

 間違っていました。売上高1000万円以下のフリーランスや個人事業主を含めて、すべての事業主が消費税の課税事業者になる、ならざるを得ないことが「インボイス制度」でした。

 現在、消費税では、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者の場合、この期間の物品の売買では納税義務が免除されています。納税義務が免除される事業者のことを「免税事業者」といい、納税義務が発生する事業者は「課税事業者」と言われています。

 「インボイス制度」とは、基本的に「免税事業者」はいなくなる、全ての事業主は「課税事業者」になるというもので、基本、零細事業主も含めて、全ての事業主から財務省が税金を徴収できるように制度改変を行うものでした。

     日本をますます貧しくする「財務省」(財務省栄えて民貧し)

 そもそも消費税そのものが弱いものいじめの税制で、通常、税金は利益(所得)から徴収されますが、消費税は経営が赤字、黒字関係なく徴収されるために、赤字経営者にとっては売上減につながる消費税は悪税以外、何ものでもありません。

 それでは、「インボイス制度」についてご紹介したいと思います。

 始めに、現在の消費税の納税義務の免除についてみます。

1 納税義務の免除:消費税

消費税では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、その課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除されます。

2 「インボイス制度」:国税庁

 1)インボイス制度の概要について。

  • 適格請求書(インボイス)とは、
    ・売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
  • 具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

2)インボイス制度とは、
<売手側>

 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。

<買手側>

 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。

(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

以上のインボイス制度は、2019年(令和元年)10月より消費税軽減税率が開始されたことに伴い、2023年10月1日から「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」として導入される予定になっています。

インボイス制度とは、適格請求書(インボイス)と呼ばれる一定の要件を満たす請求書のやりとりを通じて、インボイス(適格請求書)を受け取った者のみ、消費税の仕入税額控除をできるようにする制度です。

なお、インボイス発行事業者の登録申請は2021年10月より始まっています。

 図2から、消費者が支払った消費税は、各段階で分散されて支払われることになります。

 

 ここでもう一度インボイス制度を振り返れば、「インボイス制度」とは、適格請求書(インボイス)と呼ばれる一定の要件を満たす請求書のやりとりを通じて、インボイス(適格請求書)を受け取った者のみ、消費税の仕入税額控除をできるようにする制度です。

 3)インボイス制度の狙いと目的

 (1)益税をなくすこと

   ① 事業者免税点制度

 課税事業者・免税事業者に関わらず、売手は買手に消費税を含む金額を請求できます。 課税事業者は受け取った消費税を納める義務がありますが、免税事業者は納める義務がないため、買手から預かった消費税が手元に残ることになります。

   ② 簡易課税制度

 課税事業者が納める消費税の計算は「受け取った消費税-支払った消費税」を行って消費税を算出しますが、一定の要件を満たすと「受け取った消費税-(受け取った消費税×仕入率)」という簡易課税制度を適用できるため、本来納付すべき消費税額と差額が生じます。

 (2)複数税率対応

 税率が1種類であれば、売上額から仕入額を控除すれば簡単に納税額を算出できますが、税率が8%、10%と複数あれば、それぞれの税率から正しい納税額を算出する必要があり、複雑です。

 4)インボイス制度の必要性と理由

 (1)消費税額の正確な把握

 軽減税率の制度の導入に合わせて事業者は2種類の消費税率から消費税を計算する必要があるため、経理処理が複雑になりました。
 インボイス制度の下で導入される「適格請求書(インボイス)」は商品毎に消費税率がわかり、消費税率毎の消費税額が記載されるので消費税額を正確に把握することができます。

 (2)消費税に関する不正やミスを防ぐことができる

 事業者は買手から預かった消費税から仕入先へ支払った消費税の差し引き額を税務署に納付しますが、このとき、税率毎に仕入税額控除を計算する必要があります。また、仕入税額控除の計算根拠となるように請求書には消費税率、消費税額の表示が必要になります。
 インボイス制度により、仕入税額控除の不正やミスを防ぐことができます。

 5)インボイス制度のメリット・デメリット

  (1)メリット

納税額の計算が楽になります。

  (2)デメリット

     申請や準備などで業務負担がかかります。

 売手の事業者の場合はインボイス(適格請求書)を発行する義務があります。インボイスを発行するためにはインボイス発行事業者としての登録が必要になり、また、インボイスを発行するシステムの改修なども必要になります。
 もしも事業者登録をしないと、インボイスを発行できませんので、買手は仕入税額控除が適用できないことになります。そのため、取引が維持できなくなる可能性があります。

※)適格請求書(インボイス)発行事業者の登録

提出時期 :2023年10月1日から事業者の登録を受けるためには、原則として2023年3月31日までに提出する必要があります。
 提出方法 :登録申請書を作成の上、所轄の税務署に持参又は送付します。
 手数料  :不要です。

 以上、「インボイス制度」の概要を述べてきましたが、「インボイス制度」の問題が出てきます。その問題点に焦点を当て、改めてその問題点を考えてみたいと思います。

3 消費税「インボイス制度」の問題点

 インボイス制度とは、消費税における「適格請求書(インボイス)等保存方式」のことをいいます。消費税は、事業者が消費者等から預かった消費税から、事業者自身が仕入等により支払った消費税を差し引いて(仕入税額控除)納付する仕組みになっています。

インボイス制度では、取引内容や消費税額など所定の記載要件が記載された請求書=「適格請求書(インボイス)」を保存することによってのみ、仕入税額控除が受けられることになります。したがって、買い手側は、消費税申告・納付にあたって仕入税額控除を受けるためには、売り手からインボイスを受け取って保存しておくことが必要となります。

 このインボイス制度は2023年10月1日から開始される予定となっていますが、事業者がインボイスを発行するためには「適格請求書発行事業者」として事前の登録が必要とされています。その登録申請受付が既に2021年10月1日から始まっています。

 1)インボイス制度の問題点

   (1)「免税事業者」排除の問題

インボイス制度は、課税売上高が1千万円以下の免税事業者はインボイスを発行できないということです。いわゆる中小企業や個人事業主など小規模事業者が免税事業者に該当しますが、インボイス制度が導入されると、こうした免税事業者からの仕入・物品購入、役務提供などは「仕入税額控除」を受けることができなくなるために、買い手側は消費税の納付において不利益を被ることになります。   

したがって、課税事業者がこうした不利益を避けるため、免税事業者との取引をおこなわないことが想定され、多くの小規模事業者が取引先を失い、経営悪化や廃業に追い込まれる可能性があります。

 課税売上高1千万円以下の事業者であっても、自ら選択すれば課税事業者になることはできますが、こうした小規模事業者は消費者に消費税を転嫁することは難しい場合が多く、結局は事業者自身が消費税負担を被ることになるケースが増加するものと思われます。

 このように、インボイス制度は、小規模事業者の経営悪化を招き、あらゆる「経済的取引」から締め出すような危険性をはらんだ制度といえるものと思われます。

 この制度はこれから起業しようとする「スタートアップ企業」にも厳しいものになり、政府が促進しようとする「スタートアップ企業育成」政策とは相矛盾するものでもあります。

 日本の小規模事業者は平成24年現在、87%を占め、従業者数は約26%を占めています。こうした零細事業者を切り捨てる政策は日本の雇用環境を悪化させ、不況を拡大させるものになります。

 まさに財務省は「日本亡国論」を地で進めていると言っても過言ではありません。

(2)実務負担の増大

また、中小事業者に限らず、すべての事業者において実務負担が増大し、各種システム変更などによるコスト負担が生じます。

 現行制度では、仕入税額控除の適用を受けるための判断は、基本的にその「取引」が消費税対象であるか否かで判断できますが、インボイス制度導入後は、消費課税対象の仕入等であってもインボイスが発行された取引でなければ、仕入税額控除の適用を受けることはできません。

したがって、仕入税額控除可否判定のためには帳簿記載事項の見直しや財務システムの整備などの実務作業・コスト負担が発生し、インボイスの発行および管理に関する一連のシステム改修などが必要になってきます。

 こうしたコストは企業が負担することになります。

(3)簡易課税制度の見直し、廃止

インボイス制度は、課税仕入高に対する仕入税額控除の適用に関する制度なので、簡易課税選択事業者の仕入税額控除には影響ありません。しかし、政府・財務省はインボイス制度の導入をきっかけに、簡易課税制度そのものの見直しにつなげていく可能性があります。

 日本では、零細事業者を中心に、全課税事業者の約40%である120万もの事業者が簡易課税を選択しているといわれています。簡易課税制度が廃止・縮小されれば、こうした簡易課税を選択している零細事業者の実務負担は増大し、消費税負担も多くの場合で増加することが予想されます。

 以上のように、主に零細事業者への負担を直接的・間接的に増大させるインボイス制度ですが、なによりも、「コロナ禍」で日本全体が混乱し、経済が疲弊しているなかでも、極めて問題点の多いインボイス制度を、十分な説明もせず、密かに有無を言わせず予定どおり押し進めようとする政府の姿勢は極めて問題だと考えられます。

国民生活や弱小企業のことは顧みない「財務省のPB黒字化政策」の政治の実態が、インボイス制度の問題を通じて明らかにされます。

 2021年10月からはインボイス発行事業者の登録申請受付が始まっただけであり、実際の制度導入までにはまだ「少しの時間」があります。コロナによる新たな経済的格差が広がるなか、インボイス制度撤回はもちろんのこと、そもそも逆進性の強い消費税の見直し・廃止が必要になっています。

 青壮年の未来を担う「スタートアップ起業」を擁護する上からも、インボイス制度撤回、消費税の見直し・廃止が求められます。

 参考資料:法人格なき社団 協働

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