日本に、NATO加盟の資格はあるか


 ロシアのウクライナ侵攻から、世界は大きく動き始めています。

 既に、ゼレンスキーウクライナ大統領は2022年3月23日、日本の国会でウクライナ支援のスピーチをオンラインで行われましたから、ロシアのウクライナ侵攻がどのようなものであったかをよくご存じだと思います。

 ところで、こうした国際状況を踏まえて、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議がスペイン・マドリードで開催され、2022年6月29日、そこで今後10年の指針となる「戦略概念」が採択されるとともに、首脳宣言が発表されました。

 NATOのこの新しい「戦略概念」の骨子は、

●ロシアは最大かつ直接の脅威

●中国が欧米の安全保障に突きつける体制上の挑戦に対応

●中露の戦略的強力関係の深化は、われわれの価値と利益に反する

●インド太平洋地域のパートナーとの対話や協力を強化

であり、中国については、核兵器の開発に加えて偽情報を拡散したり、重要インフラの取得やサプライチェーンの支配、また宇宙やサイバー、北極海等の海洋で軍事的経済的力を強めていると主張し、中露がルールに基づく秩序を破壊しようとしていることは、「われわれの価値と利益に反している」と強調しました。

 首脳会議にはオーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国が招待され、「インド・太平洋地域の情勢が「欧州・大西洋に直接影響することを考えると、同地域は重要だ」として、対話と協力を深める方針が「戦略概念」に明記され、こうして、中露の位置づけが大きく変わったことで、米欧の軍事同盟であるNATOは、歴史的な転換点を迎えたと言われています。

 岸田首相はこの首脳会議で、次の指摘を行ったと言われています。

 「ウクライナ侵略は、ポスト冷戦期の終わりを明確に告げた。ウクライナは明日の東アジアかもしれない。」

 ストルテンベルグNATO事務総長の日経への寄稿文を抜粋して述べさせていただきます(日経2022年6月30日)。

『NATOは70年以上にわたって、自由、民主主義、法の支配を守り続けてきた。・・・・・。

 NATOは40もの国と協力し、例を見ないネットワークを持っている。・・・・・。

 日本が首脳会議に参加することはNATOと日本の関係、さらにはNATOとインド太平洋地域との関係にとって歴史的な一歩。我々の安全保障が密接に結びつき、いかに情報の共有が重要かということを示している。

 NATOと日本はアフガニスタンの安定、ソマリアの海賊対策、ジョージア、ウクライナの支援などで協力してきた。両者の船舶が6月、地中海で演習も実施している。日本と海洋の安全保障、技術革新などで協力を深めたい。

 NATOは2021年、インド太平洋各国との関係強化を決め、今年は共通の安全保障への危機に対応する行動計画を決めた。今はこの強い政治的な意思を実際の協力に落とし込もうとしている。電子空間、新技術、偽情報対策、海洋の安全保障、気候変動などの分野が該当する。

 現代はパートナー国を持つことがこれまでになく重要になっている。・・・・・。

 NATOが日本や他の志を共有する国と協力関係を強化することを私は望んでいる。平和を築き、安全保障を維持し、暴力や威嚇が役にたたないとはっきり世界に伝えるためだ。』

 今、欧州とインド太平洋は「安全保障の絆」で結ばれたと言えます。2022年6月の「NATO首脳会議」はまさに歴史的「会議」と言えるもので、今後歴史に深く刻まれるものと思われます。

 この中で、各国の目は日本に向かい、先進7カ国(G7)とNATO首脳会議の合間に、多くの各国

首脳は岸田文雄首相と会談し、協力を模索したとあります。

 欧米では、日本がインド太平洋地域における民主主義国の礎石と見なされています。各国とも日本の防衛力強化を歓迎していますが、同時に日本はどんな責任を果たすかに注意が注がれています。

 

  フランスの週刊誌「ルポワン」によれば、ロシアのウクライナ侵攻後、ドイツは国防費をGDP比2%、日本でも岸田首相が防衛費の相当の増額を表明し、もしも日本が国防費をGDP比2%に増額すれば日本とドイツは米中に次いで3位、4位になり、世界の軍事バランスは大きく変わることになりますが、「ルポワン」は、「案じることは全くない」と論じ、「中国や北朝鮮が地域を火薬庫に変える中、強い日本はアジアの安定につながる」記しています。

  三井美奈産経パリ支局長によれば、『少し前なら、欧州メディアは日本の防衛費増強について、「東アジアの緊張を高める」と一斉に書き立てただろうけれど、現在は警戒論が全く聞こえてこない』と、現在の欧州、日本の関係が伝えられています。

 すなわち、強い日本への期待が込められ、こうした期待の中で、日本がインド太平洋地域における民主主義国の礎石として、日本はどんな責任を果たすか、果たすことができるのかに注意が注がれていると言えそうです。

日本は「ポツダム宣言」を受諾して、敗戦を迎えました。

「ポツダム宣言」とは、アメリカ・イギリス・中国の共同声明として、日本に対して降伏要求を発表した宣言で、「もしもこの宣言を無条件で日本が受け入れない場合には、さらに激しい攻撃を加えて日本を壊滅させる」とするものでした。

このポツダム体制の下で起草された憲法では「戦力の不保持」が謳われ、憲法第9条が固定化することになります。

その後、東西冷戦が起き、日本はサンフランシスコ講和条約を経て、自由主義陣営の一員として、国際社会に復帰し、非武装から再軍備へ、朝鮮戦争勃発のときの警察予備隊がその後自衛隊に昇格することになります。

憲法9条は「戦力の不保持」で、ポツダム体制の残滓であり、この「戦力の不保持」が続いてきた理由として、

「日本は大東亜戦争という悪しき戦争をした忌まわしい国で、もしもこの国に武力を持たせたら、再び悪しき戦争を引き起こす恐れがあるから、「戦力の不保持」でなければならない」とするもので、日本を性悪説で語ろうとするものです。・・・日本人はそもそも悪を行う癖があるから、武力は持たせられない・・・

しかし、自由・民主主義の国として世界から認められ、世界の自由・民主主義を擁護する立場に立った日本は、国際秩序の維持に責任を持ち、相応に国際社会に軍事的な貢献をすることが期待される存在になってきたということを自覚する必要があります。

「自国だけが良ければよい」とする“自国中心主義”を捨て、世界に貢献することを自覚する必要があると思われます。

「ポツダム体制」からの決別

ロシアのウクライナ侵攻によって、戦力不保持の「ポツダム体制」は、完全に形骸化しました。日本は、形骸化したポツダム体制を抜け出て、世界が日本に求める期待に応えるときが、今まさに来たといえるものと思われます。

NATOは、日本に大きな期待を抱いています。

では問います。「日本はNATOに加盟する資格はありますか」と。

残念ながら、現在の日本には「NATOに加盟する資格はありません」。

NATOに加盟するためには、少なくともNATO加盟諸国並みの「国防体制」、「スパイ防止法」などが整備されていなくてはなりません。

集団的自衛権も行使できない、スパイにより機密情報が奪われても罰することができない等、国家としての体裁が全く取れていない日本は、NATOへのオブザーバー的参加は認められても、NATOへの加盟資格はありません。

 世界が今日本に求めるものは、戦力不保持の「弱い日本」ではなく、混乱する世界にあって多くの国を救うことのできる「強い日本」を求めていることに目を向けて、日本の憲法改正、国力増強が求められていることを肝に銘じる必要があるのではないでしょうか。

世界は待っています。強い日本が世界を助けに来ると。

参議院選がまじかに迫っています。

 皆さんの清き一票が、日本を世界に貢献できる日本にするようにお祈りしています。


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