日本に眠る膨大な“緑の資源”


 日本には資源がなく、どんなものでも輸入に頼り、輸入原材料を加工して、加工した材料・機器を輸出して外貨を稼ぐ加工型産業が日本の産業形態の基本だと教わってきた記憶はありませんか。

 日本でも石油、石炭、鉄鉱石等、多くの一時資源が産出されることは知っていますが、産出量は少なく、鉱工業原材料産業として発展させることはできず、結果として日本には資源がないということになっています。

 農林業は日本の産業のなかでも最も脆弱な部類に属し、多くの人は基本、農林業に見向きもしません。とりわけ戦後大量のラワン材が輸入されたことにより日本の林業は衰退し、林家は減少していきました。

 

 林野が70%の日本で、林野庁は5年毎に森林蓄積量を計測、発表しており2017年の日本の森林蓄積量は524200万㎥になっています

この森林蓄積量は年々増加しており(森林備蓄量は光合成で年々増加します)、最も古いデータの昭和41年(1966年)では18億8700万㎥であり、50年間で約2.8になっています。

森林蓄積量が年々増加している理由は人工林の蓄積量が増加しているからで、戦後ハゲ山となった山地に先人が植林し、現在の森林蓄積量になりました。しかし、林業が廃れてきた結果、大きくなった樹木が伐採・搬出されていないのも事実です。現在日本は太く木材として使える樹木を搬出できていません。

日本の森林蓄積量がどれほどのものか、ヨーロッパで最も森林蓄積量の多いドイツと比較すると、ドイツの森林蓄積量は376530万㎥で日本の森林蓄積量の0.7倍になっています。

日本には、膨大な森林資源が手つかずで残っているといっても良いものになっています。

住宅の構造材や内装材、テーブルや椅子などの家具等、様々な木材需要がありますが、·従来の建築材等の木材利用に加え、最近、ナノセルロース等、木材の成分を利用した新素材が開発・普及することにより、プラスチック代替製品として新たな利用価値が木材に認められてきました。

 ナノセルロースとは、植物細胞壁の主成分セルロースをナノレベルまで微細に解きほぐしたもので、セルロースナノクリスタル(CNCまたはNCC)、セルロースナノファイバー(CNF)等があります。

特性として、

鋼鉄の1/5の軽さで、鋼鉄の5倍以上の強度。

②温度上昇に対応して長さが変化する線熱膨張係数がガラスの1/50以下。

弾性率が-200 ℃から+200 ℃の範囲でほぼ一定。

④きわめて薄い膜状に加工できる。

 が挙げられ、

 用途として

①紙・板紙

②プラスチックの代替:包装、製品外装

③食物、医療、化粧品、医薬品

④その他:フィルター、ボディアーマー、防弾ガラス、腐食防止剤

※:増粘剤として利用;粘度を高め、またゾルゲルの安定性を良くする(食品、化粧品、医薬品、その他の工業製品に広く利用)

 日本の国土の70%は森林・原野であり、緑の資源には膨大なものがあります。

 また、ナノセルロースの原料は木材だけに限らず、一般植物ならどんなものでも原材料にすることができるため、雑草すら資源になる可能性があります。

 資源小国の日本が、技術開発によって、従来は見向きもされなかった部材を資源にできることは素晴らしいことだと思います。

 農林業の多面的な用途、資源としての位置づけができるものと思われます。また、農林業の新たなビジネスチャンスがここに隠されているのかもしれません。

 多くの方の新たなアイデアがあれば、農林業基盤ナノセルロース事業は、農業、林業に次ぐ、第三の農林業事業に発展するのかもしれません。

 財務省が、こうした貴重な研究開発に惜しげもなく多額の資金を提供してくれることを、本当に祈るだけです。

  日本の産業に幸あれ、日本の農林業に幸あれ!!


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