“財政健全化政策”の未来


―亡国の未来―

~チベット・ウイグルの後に続くか“日本”~

· 2021年、財務省の矢野康治事務次官による月刊誌「文藝春秋」(11月号)へ「このままでは国家財政は破綻する」が寄稿されました。

 内容は簡単に述べると、
1 国の債務残高は国と地方を合わせて1166兆円
に上り、国がいつ破綻するかわからない。
2 国民はバラマキを求めていない。
3 日本では歳入と歳出の推移を示した二つの折線
グラフがいわゆるワニの口をしており、財政再建は経済成長だけではできない。

4 家計も企業も金あまり状態で、10万円の定額給付は死蔵されるだけで、経済対策になっていない。

 という論陣を張り、経済再建(緊縮財政)が必要なことを述べておられます。

 しかし、財務省は2002年5月に図1のように、「外国格付け会社意見書要旨」として、財政破綻はあり得ない、と公式声明文を出しています。

表1 外国格付け会社意見書要旨

 緊縮財政をしないから国は財政破綻するとは、財務省自身、公式文書で否定しています。

ここには、日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルト(債務不履行、財政破綻と同義)は考えられないと書かれており、日本の国債の大部分は自国通貨の円で支えられていますから、当時の財務省の主張の通り、債務残高が積み重なっても財政破綻はあり得ません。

通貨を供給している政府が、日本であれば円ですが、円で借金したところで、円が返せないことはあり得ません。

 京都大学の青木泰樹先生によれば、国家の信認が無くなることをデフォルトと言うそうですが、国家の信認とは「国家の信用+通貨への信頼」とのことだそうです。そして、国家の信用は長期金利に反映され、信用のある国の国債の長期金利は低くなり、日本政府の債務残高は増加していますが、国債の長期金利は下がっており、現在金利はほぼ0%です。

言い換えれば、国家の信認がある、すなわちデフォルトしないことの証であり、「債務残高1200兆円だから、これ以上債務が増えたら日本財政は破綻する」ということはありません。

確かに、無限に財政赤字を大きくすることには無理があるでしょうが、その頃には日本経済自体に何らかの異変が起きているものと思われます。

 ここで、柴山桂太氏の面白い「財政論」がありましたから、少し短くしてご紹介します。

『「財政赤字をこれ以上拡大すると(政府債務をこれ以上拡大すると)、ハイパーインフレになる!」

 このような主張が後を絶ちません。

 しかし、平成の日本は、およそ20年もの間デフレだったのです。それなのに、ハイパーインフレを心配するのは、どういうことなのでしょうか。

 ところで、このハイパーインフレ論者たちは、財政赤字の拡大(債務残高の拡大)がインフレを起こすと言っているわけですから、「デフレ脱却には財政赤字の拡大が効く」ということには、同意しているわけです。

 それにもかかわらず、彼らは、デフレ下での財政赤字の削減を要求しています。その理由が、財政赤字を拡大すると、いずれハイパーインフレになるからだと言うのです。

 しかし、何もハイパーインフレになるまで、財政赤字を拡大する必要などありません。デフレを脱却し、インフレ率が2〜4%になる程度にまで、財政赤字を拡大させればいいだけの話でしょう。

 例えば、インフレ率が4%になったら、財政赤字をやめればいいのです。

 それなのに、ハイパーインフレ論者は、なぜか、いったん財政赤字が拡大し始めたら、ハイパーインフレになるまで「やめられない、止まらない」と思い込んでいるのです。

  なぜ、財政赤字の拡大を止められないと思っているのか、ハイパーインフレ論者に聞いてみましょう。

  すると、こんな答えが返ってきます。

 政治家は大衆迎合的な予算のバラマキをやりたがるし、歳出削減や増税には国民が猛反対するから、財政赤字は減らせず、インフレを止められないのだ」と。

しかし、財政支出を削減したり、増税をしたりしなくても、景気がよくなれば(インフレになれば)税収が自然に増えるので、財政赤字は減らせます。それに、中央銀行が金融引き締め政策を行って、インフレを止めるという手もあります。

 しかも、平成の日本は、インフレどころか、デフレ下であるにもかかわらず、歳出削減や増税を断行したという(不名誉な)実績をあげています。これほど極端にストイックな日本が、高インフレになっても歳出削減や増税ができずにハイパーインフレを引き起こすなどと、どうやったら考えられるのでしょうか。

 歴史的にもハイパーインフレを経験した国というのは、戦争・内戦・革命などによる破壊のせいで供給力が極端に失われた「第一次世界大戦後のドイツなど」とか、旧社会主義国が市場経済へと移行する過程で混乱が生じた「1990年代の旧ソ連諸国」など、異常なケースばかりです。

 いずれも、めったに起きるものではありません。特に、平時の先進国では、まず起きません。そのようなハイパーインフレが、およそ20年もデフレの日本で起きるとは、どういうことなのでしょうか。

 ところで、「財政赤字が膨張すると、政府の信認が失われて、市場が国債を買わなくなり、金利が高騰する」、 このように主張する経済学者や経済アナリストも、数多くいます。

 市場が「日本の財政赤字は大き過ぎて、これ以上、維持できない」と判断してしまい、誰も日本国債を買わなくなることを恐れているのです。

 確かに、誰も国債を買わなくなったら、国債の金利は急騰します。 

 金利が急騰すれば、政府は、利払いの負担に苦しむことになります。財政赤字の拡大が金利の上昇を招くと心配する論者は、こうなるのを恐れているのです。だから、市場が、日本政府の財政破綻の心配をしないように財政赤字を削減し、政府の信認を維持しなければならないというわけです。

 しかし、日本の政府債務の対GDP比率が上がり続け、ついに主要先進国中で「最悪」の240%近くにまで迫ったにもかかわらず、そして、経済学者も財務省も財政危機の警鐘を強く鳴らし続けているにもかかわらず、長期金利は世界で最も低い水準で推移してきました。2018年時点の長期金利は、0.03%程度しかありません。

 つまり、日本国債は買われ続けているということです。

 理由の第一は、デフレだからです。

 デフレとは需要不足の状態で、資金需要がないのです。このため、金融機関は国債を買うしかありません。デフレ下では、金利が極限まで下がるのは、そのためです。

 加えて、市場は、本当は、日本の財政が破綻するなど信じていません。これが、国債の金利が低い第二の理由です。

 日本政府は、ギリシャとは違って、自国通貨を発行できるので、債務不履行に陥ることはあり得ません。それに、財政赤字の拡大それ自体が金利を押し上げるということもありません。

 経済学者や経済アナリストが何と言おうが、これが現実です。市場の金利が上がらないのは、この現実を反映しているからにすぎません。言い換えれば、日本政府は、市場からの信認を十分に得ているということです。

 実際、金融危機などが起きて株価が急落すると、円高になることがよくあります。しかし、金融危機が起きると、財政危機の国の通貨が買われて高くなるなどというのは変な話だと思いませんか。要するに、市場は、日本円が安全資産であること、つまり日本の財政破綻などあり得ないということを分かっているということです。

 そして、国債の金利が低い理由の第三は、2013年以降の量的緩和政策で、日本銀行が国債を大量に購入しているからです。 日銀が日本国債を買うことができるのだから、日本国債が買い手を失って、金利が急騰するなどという事態は、およそ考えられません。日本国債は、政府が元本を保証しています。

 財務省自身が、ホームページで「国債は、『手軽』で『安心』。選ばれる理由があります」「元本割れなし」「国が発行だから安心」などと紹介しています。元本が保証されていて、しかも高金利だったら、誰だって欲しいと思います。』

 如何だったでしょうか。ここでいう財政均衡論、ハイパーインフレーション論、どれも矛盾を考えさせるものです。

 しかし、にもかかわらず、現在も「財政均衡論(プライマリーバランス(PB)の黒字化)」が行われており、緊縮財政が実施され続けています。

 その結果としての、地方自治体の財政力指数を見ますと、東京都を除き軒並み1.0を割り込み、地方交付税交付金の必要が窺われるものになっています。

※:財政力指数=(財政収入額/基準財政需要額)の3年間の平均値

 北海道、沖縄の平成30年度の、0.4583、0.3664と低く、必要財政に対して財政収入は45%、36%程度に過ぎず、財政の窮状が窺われます。特に低いのは島根県で、財政力指数は0.2645であり、必要財政に対して財政収入は約26%にしか過ぎず、約74%は交付金に頼った財政になっています

 図2から財政力指数の推移を見ますと、東日本大震災が起きる頃が0.53~0.51程度あったものが、東日本大震災後急減し、0.49台に落ち込みますが、安倍政権時代に0.52程度にまで回復します。しかし、横ばいが続いており、財政力の改善は見られません。

 図3で地方交付税交付金の推移を見ますと、バブル崩壊期、東日本大震災のような大きな経済危機が訪れた場合に急増しますが、その後は減少している様子が窺われます。東日本大震災の時は多額の交付金が注入されましたが、財政負担を嫌う財務省の下、その後は急減し、従来通りほぼ15兆円程度の交付金で賄われている様子が窺われます。

 ここから見てとれることは、日本の経済力は落ちており、財政力は停滞し、ここで緊縮財政を実施しても税収の増加を期待できないことです。

 言い換えますと、財政均衡、プライマリーバランスの黒字化は、緊縮財政を実施している限り、絵に描いた餅のようなもので、実現は不可能ということが類推されます。

 この財政力の停滞期間、緊縮財政が延々と続けられてきました。その結果何が起きたのでしょうか。

 そうです。日本売りが始まりました。財政に逼迫する地方自治体は、

政府が経済対策をとらないなら、資本はどこでもよいとして、中国から大量の資本を呼び込みます。

少し古いのですが、2012年6月29日号の「週刊ポスト」の記事を見ると、中国による日本の土地の買収事例が紹介してあります。

1】陸上自衛隊滝川駐屯地(北海道砂川市):駐屯地が一望できる山林を中国系企業が買収

【2】陸上自衛隊倶知安駐屯地(北海道倶知安町):隣接地100ヘクタールあまりを中国系企業が買収

【3】航空自衛隊三沢基地(青森県三沢):隣接地が外資に買収されたとの情報が流れた

【4】中華街構想(宮城県仙台市):中国の投資グループが大規模複合商業施設の建設を計画

【5】中国大使館増設(東京都港区):中国大使館が5677平方メートルの国有地を落札し政府に批判

【6】中国総領事館(新潟県新潟市):移転用地として約5000坪もの広大な土地取得が問題

【7】浅間山荘(長野県軽井沢町):中国系企業の日本法人に買い取られた

【8】中国総領事館(愛知県名古屋市):約3000坪の国有地購入計画が問題に

【9】国家石油備蓄基地(長崎県五島列島内・中通島):中国資本が島の総合開発計画を提案

【10】包丁島(長崎県五島列島内):島全体が売りに出され、中国に買われてしまうのではと騒ぎに

【11】航空自衛隊福江島分屯基地(長崎県五島列島内・姫島):隣接地の土地所有者が中国企業と売買交渉していたことが判明

【12】奄美大島、加計呂麻島(鹿児島県):中国資本が山林伐採事業等を計画し住民が反発

【13】航空自衛隊沖永良部島分屯基地(鹿児島県沖永良部島):隣接する山林を中国人投資家が現金で買おうとした

【14】海上保安庁石垣海上保安部(沖縄県石垣島):巡視船を監視できるマンションを中国人購入

【15】旧日本軍高射砲陣地(沖縄県西表島の外離島):謎の中国人一行、離島購入を断わられる

この中国の土地買収は何を意味しているのでしょうか。

 中国出身で、中国の内情に詳しい「石平・拓殖大学客員教授」は中国の国家戦略をもとにこう語ります。

「中国は2005年に北朝鮮の羅津港を租借し、悲願だった日本海進出の拠点を確保した。そこから新潟までは一直線で、今後、新潟は中国にとって戦略上の重要な拠点となる可能性が十分にある」

 自民党の参院議員で元陸上自衛官の佐藤正久氏は、「中国が2年前に制定した「国防動員法」との関連を懸念する。国防動員法とは、中国が他国と戦争状態になった際には、中国国民はすべて動員され、戦争に協力しなければならないとする法律である。その対象は中国国内にいる国民だけでなく、海外に住む中国人も含まれる。」

 「中国の国防動員法では、有事などの際に、人民解放軍が自国民保護のために他国に上陸することも可能だとしています。日中関係が緊迫した時に、新潟の総領事館はその拠点として、軍事要塞化されるのではないかという不安の声もありますが、我々は許しません。さらにいえば、新潟は北朝鮮による拉致の拠点にもなっていました。中国は北朝鮮の後ろ楯ですから、北朝鮮の工作員なども総領事館に逃げ込む可能性があります。」

 問題は、中国が取得した土地にいったん公館が建てられれば、そこに日本の公権力が及ばなくなることです。

 ウィーン条約は22条1項で次のように規定しています。

<使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない>

 軍事ジャーナリストの井上和彦氏が言います。

「仮に中国が取得した土地に総領事館が建てば、そこは治外法権になってしまう。外交官が普段から使っている車の中も治外法権になる。そうなれば、中国が総領事館の中で、爆弾を作ろうが何をしようが一切手出しはできない。まさに日本国内に“中国の領土”ができるのに等しいのです」

 日本が緊縮財政下で公共事業もカット、国内研究開発・設備投資もカットし国力が急減した結果、地方経済が疲弊し財政破綻に瀕した自治体は外国資本、特に最も危険な中国から大量に資本を取り入れ、国防動員法の下、日本の安全が脅かされるものになっています。

 台湾、尖閣諸島を中国の「革新的利益」を担うものとして、その領有に対して戦争も辞さじを世界に表明している中国のその恫喝の実態を見ておきたいと思います。

 図4は、中国がいつ頃日本のGDPを抜き去ったかを示したものですが、その時期はだいたい2010~2015年頃と思われます。

  ではこの頃、尖閣ではどのようなことが起きていたのでしょうか。

 図5は、中国工船が尖閣の日本領海侵入を行った件数の推移を見たものです。平成24年は2012年ですから、ほぼ中国のGDPが日本を抜き去った時期と符合します。

  すなわち、中国の経済規模が日本より大きくなった途端に、日本の領海侵入を大々的に行い始めています。

※1)領海 :海岸線から12カイリ以内で、国の主権がおよぶ

※2)接続水域 :海岸線から24カイリ以内で、犯罪を未然に取り締まれる

  現在の中国と日本の経済規模格差は拡大しています。そして、中国は現在、沖縄の領有権を主張し始めています。

 尖閣諸島での中国工船の激増は、今後日中間の経済規模差が拡大するにつれて、沖縄周辺でも繰り返されるかもしれません。

 まさに、中国の尖閣、沖縄進攻の前夜とでもいうものになっています。

 こうした情勢下で、日本国土を国防動員法を有する中国(中国資本の背後には必ず中国共産党が控えています)に売り渡すことが、どれほど危険か、まだ日本国民の多くは理解していません。

 もっとも問題は、政府・財務省がこの危険を理解しておらず、20~30年続いて日本をデフレに追い込み、国力を大きく損なった政策を、今後も続けようとしていることにあります。

 国債発行をしても、日本は債務超過で倒産しません。今こそ、積極財政で日本を国力増進・強靭化を早急に図る必要があります。

 国が無くなれば緊縮財政などできませんし、意味がありません。今は、国が滅びないように、積極財政を施す時です。

 はっきり言います。日本は現在、亡国の道を歩んでいます。そしてその行く先は、中国の属国、いや属国なら良いかもしれませんが、チベット、ウイグルのように、国を失うかもしれません。

 私は日本が大好きです。日本では人命が尊重され、好きなことが言えて、好きなことができ、どこへでも行ける自由があります。

 しかし、人命が軽視され、言論の自由、旅行の自由が制限され、時には臓器移植、臓器ドナーに使われるかもしれない国の属国、そのような国に支配されることは望みません。チベット、ウイグルの悲惨さはよく知っています。

 この状況を変えるには、国政を変える以外に方法がありません。近々、国政選挙があります。この日本の苦境を救える国会議員を選びたいものです。

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