李氏朝鮮化する“日本”


 1392年、高麗の李成桂が高麗王・恭譲王を廃して、自ら権知高麗国事になり即位を自称したことで李氏朝鮮が成立します。

 朝鮮という国号は明の洪武帝から下賜されたものであり、正式に明に朝鮮国王として冊封を受けたのは第3代太宗治世下1401年になってからでした。

 明と朝鮮の関係は、宗主国と属国、君臣父子の関係であり、李氏朝鮮は中華の分身の小中華と自称して、宗主国の明に仕える立場から中国と事大外交※1)が繰り広げられることになります。

※1)事大主義とは、自己の信念を捨て、強いものや風潮に迎合することにより、自己実現を目指す行動様式のことで、「事大外交」とは、冊封体制による 外交を指します。

 その後、弱体化した明に代わった清は1636年、「朝鮮は清に服従し朝鮮王子を人質として差し出すこと、また清の太宗(ホンタイジ)は朝鮮国王“仁祖”に対して三跪九叩頭の礼(三度跪き、九度頭を地にこすりつける)」を要求し、朝鮮国王“仁祖”は清皇帝を公認する誓いをさせられました。

 1392年、李氏朝鮮が成立して以来、約500年間、選民意識の強い朝鮮は中国王朝の冊封体制下にあり、中華の分身の小中華と自称して自己を権威付けようとしてきました。当時の朝鮮の考え方で言えば、世界で最強の軍事国家・最高の文明・文化国家は中国であり、その強大な中国に属していない辺境の日本は、小中華の朝鮮から言えば、自尊心、自己満足を満たすためにも朝鮮よりも文化・文明的に劣った野蛮な国であり、朝鮮が教え諭す国として位置づけられ、長い間日本は下賎の国として考えられてきました。

 ところで李氏朝鮮には身分制度があり、朝鮮の身分制度は「両班、中人、常民、賤民」からなり、両班が絶対的権力を握っていました。この朝鮮の身分制度が無くなったのは、1910年(明治43年)8月29日に「韓国併合ニ関スル条約」へ基づき大韓帝国政府と韓国統監府が廃止され、大日本帝国(日本)が大韓帝国を併合してからになります。

 この身分制度では両班は絶対的権力を握っており、官僚を独占し、国民を意のままに操り、この5百年間科挙制度の改革もないまま、体制を強化する儒教の教えの下、国は運営されてきました。

 その間の李氏王朝の発展はなく、国民は辛酸をなめつくしてきました。

 日本外務省調査局がまとめた「朝鮮統治の性格と実績-反省と反批判」によれば、韓国の耕地面積は李朝隆煕元年(07年、日韓併合条約は隆煕4年)までの215年間で約4割弱の絶対的減少李朝末期に至る151年間で人口は2割弱減少したといいます。つまり、李朝時代の韓国の農業は縮小に縮小を重ね、農民は困窮を窮めていました。

 韓国併合時(19世紀末)に現地を見て回った英旅行家イザベラ・バードの『朝鮮紀行』(講談社学術文庫)では「堕落しきった朝鮮の官僚制度の浄化に日本は着手したのであるが、これは困難きわまりなかった。日本が改革に着手したとき、朝鮮には階層が二つしかなかった。盗む側と盗まれる側である。そして盗む側には官界をなす膨大な数の人間が含まれる」とあります。

 19世紀末でも、韓国がこの状態であったことを知っておく必要があると思われます。

朝鮮は既得権益者である両班が朝鮮国王の下で、儒教(制度)の上に科挙政策(制度)を実行し、変わることのない科挙政策によって国民は長い間、悲惨な目に遭ってきました。

 現在の日本は、既得権益に胡坐をかく財務省という両班が規制緩和・自由貿易というコスト低廉化制度の下で、「財務の健全化・プライマリーバランス(PB)の黒字化」政策を実行し、長い間国民はデフレで苦しんできました。

 韓国の両班体制は日韓併合によって駆逐され、その後は新たな資本主義体制の下で韓国は急速な発展を遂げてきました。

 日本のPB黒字化財務省は、新たな制度・政策への変更によって変えられなくてはならない状況にあり、これが無ければ、日本国民は永久にこのデフレの罠から抜けられず、その結果中國経済に飲み込まれ、日本はアメリカ合衆国日本州ではなく、中華人民共和国日本省になる可能性があります。

 財務省は、財務省の仕事は「財政健全化」が最大の仕事と思っているかもしれませんがそれは違います。

 財務省の本当の仕事は、財務を利用して日本を発展させることに最大の仕事があり、「財政健全化」はその中の一分野に過ぎません。

 そして、財務省が経済指標で見なければならないのは「インフレ動向」であり、「PB」ではありません。

 基本的に自国通貨を持ち、通貨発行に制限の無い日本が、通貨不足で倒産することはありません。ただ、問題は通貨発行量が多すぎて過大なインフレになる危険があるために、このインフレ状況に注意する必要があり、このインフレ動向に政府(財務省)、日銀は注意を払う必要があります。

 ここに通貨発行量に制限を加える必要があり、無制限に通貨発行が容認される訳ではありません。

 現在の財務省がしていることは、今後通貨不足に陥る危険があるから「財政健全化」を推進しなければならないと言っていることと同じで、自国通貨を持たず、通貨発行権の無い国と日本を同列に見て、だから「財政健全化」を進めなければならないと言っていることと同じです。

 つまり、財務省が通貨発行に基本制限の無い日本ですべきことは、経済成長の道を財務から示すことで、「財政健全化」ではありません。

 今日本は韓国の両班体制と同じ道を歩もうとしており、この韓国の両班体制と同じ道を歩むなら、今後日本に悲惨な状況が待ち受けていることを覚悟する必要があると思われます。

 ※※ 現在、通貨発行量の拡大で成功しているのは中国です。確かに都市バブル、住宅バブルとも言われていますが、毎年大量に発行された自国通貨「人民元」によって、中国経済は急速に拡大し、今のままでは経済規模がアメリカを凌駕するとも言われています。

 この反対の極値にいるのが日本で、通貨発行量はこの20~30年、ほとんど変わっていません。したがって、経済成長もありませんでした(財政健全化政策によります)。

 皆さん、日本はこのままで良いのでしょうか。

 数年後、中国の経済規模は日本の10倍を超え、軍事力はどれだけ差が出るのか分かりません。日本は、人権も無ければ、人命も尊重されない国に併合される可能性があります。皆さんは容認できますか。

 財務省がしていることは、日本を中国の一部にすることです。

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