-財政健全化推進本部-
自民党の財政健全化推進本部(額賀福志郎本部長)は、2022年5月26日に政策審議会に提言を報告し、政府が掲げる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランスPB)を2025年度に黒字化する目標を堅持する姿勢を示しました。 「財政健全化の『旗』を下ろさず、財政健全化目標に取り組む」と明記し、内外の経済情勢などを常に注意しつつ、状況に応じて必要な検証を行っていく」とも言っています。
さて、ここで皆さんに考えていただきたいのは、「国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランスPB)を黒字化する」という提言です。
自民党の財政健全化推進本部は、プライマリーバランス(PB)を国と地方で同レベルに見ていますが、皆さんはどう思われますか。
PBを国と地方で同レベルに見てよいのでしょうか。
地方自治体には「紙幣発行権」がありませんが、日本国(日本銀行)にはあります。したがって、基本的に国が基礎的財政収支の問題で破綻することはありません。
勿論「紙幣発行権」の無い地方自治体はPBの黒字化は大切です。しかし、国と地方自治体を同レベルに扱うことはできません。
財政ファイナンスについて見てみましょう。
財政ファイナンスとは、「国債のマネタイゼーション」とも呼ばれ、国(政府)の発行した国債等を中央銀行が直接引き受けることをいいます。これは、中央銀行が政府に対して、マネー(資金)をファイナンス(供給)することであり、政府の厳しい財政状況において、財政赤字の拡大や穴埋めの支援策として、中央銀行が直接協力することを意味します。
財政ファイナンスのリスク
財政ファイナンスを行うと、その国の政府の財政節度を失わせ、中央銀行による通貨の増発に歯止めが掛らなくなって、悪性のインフレ(ハイパーインフレ等)を引き起こす恐れがあると言われ、現在、先進各国では、財政ファイナンスを制度的に禁止しています。
日本では「国債の市中消化の原則」と呼ばれるものがあり、財政ファイナンスと見なされる恐れのある、日本銀行における国債引き受けは、『財政法第5条』によって原則として禁止されています。
ただし、金融調節で保有している国債のうち、償還期限が到来したものについては、『「財政法第5条(ただし書き)」』の規定に基づき、国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借り換えに応じています。
2013年から実施されている量的・質的金融緩和で、日銀が大量の国債を購入・保有していますが、日銀は金融政策上の必要性に基づくものとして、財政ファイナンスを否定しています。
現行法でも、政府が借り換えを行えば、財政破綻することはありません。
しかし、そもそも、「財政ファイナンス」を禁止する理由は、『政府の財政節度を失わせ、中央銀行による通貨の増発に歯止めが掛らなくなって、悪性のインフレ(ハイパーインフレ等)を引き起こす恐れがある』からであって、デフレで苦労しているとき、「財政ファイナンス」でデフレ脱却、インフレ突入となれば、何らの問題のあるものではなく、また財政ファイナンスをすることによって困る企業、消費者はいません。
財政ファイナンスの危険性は「財政規律の喪失を招く」「中央銀行による通貨の増発に歯止めが掛らなくなって、悪性のインフレ(ハイパーインフレ等)を引き起こす恐れがある」「その国の通貨や経済運営に対する国内外からの信頼が損なわれる」ということですが、財政ファイナンスをして企業が困るとか、政府債務が増加するなどと言った問題、法的問題は一切発生しません。
財政ファイナンスは、財政規律の喪失を意味するから実施には反対、また国と日銀は別会社だから連結決算はできないとうとう、こうした枠にはまった中で、国のPBを考えるから解決方法が出ないのであって、こうした枠を取り払えば、“財政破綻は人が創った結果”として考えられるのではないでしょうか。
政府がなすべき最も重要なことは、したがって経済の活性化、経済を成長の軌道に乗せることで、財政規律云々ではありません。
そして経済活性化、経済成長の過程で問題になる“インフレ”をどの程度に収めるかが最も重要な政策になります。
自民党の財政健全化推進本部(額賀福志郎本部長)は間違った政策を政府に進言、押し付けようとしています。
国、地方自治体の基礎的財政収支(プライマリーバランスPB)の黒字化を政府目標としている限り、日本はデフレからの脱却はできません。
政策変更の英断を望むものです。
皆さんのご活躍をおいのりしています。