マレーシアのマハティール元首相は96歳になられるも、元気に政治活動に携わっておられます。
「ルックイースト(ポリシー)」あるいは「東方政策」という言葉を、よく耳にします。
東方政策とは、1981年 にマハティール元首相が提唱した構想で、日本の成功と発展の秘訣が国民の労働倫理、学習・勤労意欲、道徳、経営能力等にあるとして、そう した要素を学び、マレーシアの経済社会の発展と産業基盤の確立に寄与させようとするマレーシア政府の政策になります。
東方政策はマレーシア政府の政策ですが、日本とマレーシアとの協同プロジェクトでもあり、日本は1982年以降今日に至るまで、東方政策の下で約12,000名の研修生・留学生を受け入れてきています。
彼らはマレーシアで日本関連の文化事業に携わったり、日本の地方自治体で国際交流を担当したりするなど、日本とマレーシアの「架け橋」として、日マ関係の相互理解と友好促進に大きく貢献しています。
マハティール氏は、日経新聞のインタビューで、
『日本をモデルとするルックイースト政策をマレーシアはさらに強化する必要がある。』と述べておられます。中国ではありません。日本です。
マハティール氏は具体的な事例として、「日本の大学の誘致」を挙げておられます。その理由として、「日本語で教育を受けた人材が国内に多くいれば、日本からの投資を受ける恩恵がさらに大きくなる。また、貧しい国の学生がコストの安いマレーシアで日本の教育を受けることができる。」と指摘され、そして、マレーシアだけでなく、周辺の新興国にも利点があると力説されました。
現在、日本では、海外分校として筑波大学が検討をしておられるようです。
マハティール氏は東南アジアを洞察されて、マレーシアの統一マレー国民組織のイスマイルサブリ首相や国軍色が強い政権のタイなどから、「東南アジアにはまだ民主主義が深く組み込まれていない。欧州でも民主主義が受け入れられ、機能するまでに長い時間を要した」と述べられ、東南アジアの民主主義はなお発展途上段階にあると話されました。
そして96歳のマハティール氏は現在の世界情勢について、「気候変動問題という自然の危機に加えて、新型コロナウイルスやウクライナ問題といった危機が積み重なっている」として、マハティール氏が経験された中でも最大の危機にあると語られました。
「現代ルックイースト」は“中国”と誰かが唱えましたが、マハティール氏の「ルックイースト」は民主主義を前提にしたものであり、強権主義をモデルにするものではないことがはっきりしました。
経済成長さえよければ、主義、体制はどうでもよいというものではなく、マハティール氏は、民主主義を人類の大切な政体として考え、その中で日本を「ルックイースト」の手本とされたことにたいして、私は日本人として「背筋が伸びる思い」がしました。
社会では、物事の本質をとらえないまま、その形だけをとらえて理解したとする論調が多いのですが、マハティール氏の「ルックイースト」の内容を知り、マハティール氏は当代の優れた指導者であることを改めて知ることができました。
そして懸念は、そのマハティール氏が現在の世界情勢は、96歳のマハティール氏が経験された中でも最大の危機にあるとの認識を示されたことにあり、この認識は共有していきたいと思います。
皆様の生活が平安・無事であることをお祈りしています。