人生100年を生きる学び直し


目次

  • 1.定年後の人生と2030年の人手不足産業
  • 2.新しい資本主義の確約
  • 3.転職そして退職後「起業」
  • 4.むすび 

 定年退職された方とお話しをする機会がありました。お話をした皆さんのお若いこと、体はいたって健康で知識はあり、これだったら定年はもっと延長しても良いではないかと思ったものでした。

1.定年後の人生と2030年の人手不足産業

 パーソル総合研究所と中央大学による「労働市場の未来推計 2030」によれば、「65~80歳くらまで働いてもよい」が、51.2%、「働けるうちはいつまでもが42.0%」で、多くの人が定年後も働きたい、働いてもよいという感覚でおられることが分かります。

図1 働いてもよいと思う年齢
出所:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計 2030」

 60~69歳の人で「仕事をしたいと思っている人」26.0%の調査では、「働いていない理由」として、”適当な仕事がみつからなかった”、”健康上の理由”などが挙げられています。

図2 働いていない理由
出所:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計 2030」

 ここから垣間見えてくることは、この人生100年時代になんなんとする現代、多くの人は健康であり、自分に合った仕事が見つかれば、生涯現役で働きたい、と考える人が多いのではないかということです。

 私も、ひょっとしたら生涯、現役で働きたいという部類に属するかもしれません。

 ここで、注意しておかなくてならないことは、生涯現役で働くにしても、急速に変化する現代社会にあって、どういう分野で、どういう能力・才能・技術が求められ、必要とされるかということです。

 退職後、起業される方も多くみられます。しかし、新しく起業するにしても、時代を理解し、時代の流れをよく知った上での起業が求められ、過去に埋没した起業では成長の見込み、発展の見込みはつきません。

 最近の人手不足業界は、①IT・通信②サービス③メーカーと言われ、職種としては、①技術系②専門職③企画・管理系などが挙げられていますが、2030年頃には、①医療・福祉、卸・小売などのサービス、②通信・製造業などで人手不足が顕著になると、パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計 2030」では予測しています。

図3 今後人手不足になる産業
出所:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計 2030」

2.新しい資本主義の確約

 岸田首相はイギリス講演で「新しい資本主義」について、次のように説明しています。

 『「新しい資本主義」について、「新しい資本主義における【成長と分配の好循環】を実現するうえでフローとストックの両面で「人への投資を伸ばす重要性」について語り、フローでは「賃上げ」、ストック面では「職業訓練」「学び直し」などへの投資とともに【貯蓄から投資】を進めることの重要性を掲げられました。

 リカレント教育(社会人の学び直し)など、生涯にわたる能力発揮の推進、成長分野への労働移動の円滑化推進支援に3年で4000億円を用意し、民間ニーズを反映しながら、この事業に取り組むとされています。

 科学技術イノベーションの投資では、必要な予算を確保するとともに、民間投資を引き出し、21年から5年間で官民合わせて総額120兆円を目指すと言われています。

 グリーンへの投資は、今後10年間で、官民協調で150兆円の新たな関連投資を実現し、省エネ基準の強化などの制度面での対策と長期大規模投資を促進するための資金支援などをセットで講じていくと言われています。』

 ここで協調されていることは、リカレント教育(社会人の学び直し)であり、生涯にわたる能力発揮の推進、成長分野への労働移動の円滑化推進を進める政府の意思です。

 従来は学び直しは「個人負担」が多かったかもしれませんが、今後は政府支援による「リカレント教育(社会人の学び直し)」が本格化する可能性があります。

 人手不足の今の時代は、まさに一人一人のマンパワーを引き上げることにより「経済活力を高める」こと以外に、良い方法はないかもしれません。

 この時代の潮流に乗り、人生100年時代を生き抜く力を、自己負担少なく達成できる時が今まさに始まったと言えるかもしれません。

3.転職そして退職後「起業」

 現在は大変な時代かもしれませんが、しかし、この時代を自分の見方にした方は、今ほど波乱に満ちた時代はないかもしれません。

日本の転職市場は変わってきています。その起点となったのがスタートアップ企業で、大企業からの転職者数は2018年に比べて2021年現在、7倍に増えていると言います。

 あるシステム会社に勤めていた40歳を超える女性(ひと)は、不動産の営業システムを開発する会社に転職することによって、収入が10%アップしたと言います。

 またある男性(ひと)は、大手出版社のデジタル関連の事業を担当していましたが、自由に働けない不満からアプリ開発のスタートアップ企業に転職し、同じ給与水準でやりたい仕事につけて満足と言われています。

  若年層向け転職サイト「AMBI(アンビ)」によれば、2021年4~9月に大企業からスタートアップ企業に移った件数は2018年4~9月に大企業からスタートアップ企業に移った件数の約7.1倍になり、大企業、スタートアップ企業の平均年収差も2017年の38.4万円から15.3万円にまで縮小してきており、スキルがあれば、生きがい、自分にあった職場環境を求めて転職は今後進むことが予想されています。

 現在多くの企業でリストラを実施しています。例えば、リストラ実施企業の登録者数が2018年の登録者数を1とした場合、青山商事(3.7)、JT(3.1)、ホンダ(2.2)、パナソニック(1.5)、三陽商会(1.2)と多くなっており、コロナ禍が続く中、今後もこの傾向は続くことが予想されますが、このリストラ人員はスタートアップ企業などに吸収され、総体としてみれば失業者数の増加はあまり見られない状況にあるようです。

現在、日本にはスタートアップ企業が少なく、世界はアメリカと中国にスタートアップ企業は集中しているようです。しかし、日本は周回遅れかもしれませんが、徐々にこの分野への取り組みも増えてきています。

因みに世界のユニコーン企業(評価額10億ドル、約120億円以上の未上場、新興企業)を比べると、アメリカ151社、中国82社、インド13社、インドネシア4社、日本1社と、その差は歴然としています。

この周回遅れの原因は、日本はそもそもトップ大学を出た優秀な人が起業するケースが少なかったり、スタートアップ企業への社会的評価が低く事業運営に失敗した場合のフォローが十分でなく再度のチャレンジがしにくい風潮があったり、日本国内で資金調達できる金額が桁違いに低かったりと、スタートアップ企業が育ちにくい風土があったためのようです。

 しかし、最近ではこうした状況も徐々に改善され、トップ人材がスタートアップ企業を立ち上げるケースが増え、海外から大きな資金を調達する企業も増えてきており、これからの日本のスタートアップ企業の成長に注目する時がきたようです。

 「リカレント教育(社会人の学び直し)」、転職を通じて様々な知識と経験を積んだあなたは、まぎれもなく高齢であっても社会の第一線で活躍される“人”です。

 岸田内閣が目指す「新資本主義」は、今、あなたのチャレンジを待っているのかもしれません。

4.むすび 

 人生100年時代、定年後の期間は長いものがあります。その間に、過去にはあまり見向きもされなかった「リカレント教育(社会人の学び直し)」が、スタートアップ企業とともに、社会の重要な機動力、原動力になろうとしています。

 政府は、国を挙げてこの「リカレント教育(社会人の学び直し)」に邁進しようとしています。

 皆さんの未来の成功をお祈りしています

私もあなたに負けず、勇気をもって未来に“羽ばたきたい”と思います。


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